法務リスクにはどんなものがある?法務リスクの種類や防ぐための対策とは?

法務リスクにはどんなものがある?法務リスクの種類や防ぐための対策とは? 法務リスク

企業が抱えるリスクはさまざまです。地震、洪水などの自然災害リスク、テロ・脅迫といった社会リスク、火事・停電・盗難といった事故リスク。
法務リスクとは、各種法令の遵守を怠ることにより企業が被るリスクです。

脱税・申告漏れ・所得隠し、賃金の不払い、食品の産地偽装、建築物の耐震偽装などが法務リスクとして挙げられます。
マスコミで取り上げられる機会も増え、民事責任、刑事責任といった訴訟上の結果だけでなく、社会的な非難、企業イメージの低下、売上げの低下、商品ボイコットなど多くの影響が生じるでしょう。

法務リスクは、事業の停止や縮小はもとより、従業員や企業に甚大な被害・影響を及ぼします。
その結果、企業が「緊急事態」に陥ることも考えられます。

今回は企業法務リスクの紹介から、法務上で発生するリスクと対策をお知らせします。

法務リスクの種類

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製造物責任(PL)

製造物責任とは、製造物の欠陥によって生命、身体または財産に生じた損害について、製造者が負う損害賠償責任のことを言います。
製造物責任法によって定められ、過失がなくても問われる非常に重い責任です。

製造物責任の事案は「80歳の男性がこんにゃくゼリーを気道に詰まらせ死亡したとして、遺族が和菓子製造業者に対して損害賠償を求めた」が当てはまります。
このケースでは、多額の損害賠償額をもって和解しています。

製造物責任が無過失責任であることを認識して、「当該製品が通常有すべき安全性を確保できているか、いないか十分確認することが重要です。

知的財産権の侵害および非侵害

知的財産権は技術などに関する産業財産権と、文学などに関する著作権等の大きく2つが存在します。

  • 特許権 新規の発明をした者に対し与えられる
  • 実用新案権 既存の特許発明をより使いやすくするためのアイデアの権利
  • 意匠権 物の形状や模様、色彩などデザインに関する
  • 商標権 会社名や商品名、ロゴなどについて

著作権

自分の気持ちや考えを作品で表現したものを「著作物」、著作物を創作した人を「著作者」、そして著作者に対して法律によって与えられる権利のことを「著作権」と言います。

損害賠償請求や差し止め請求をされることも。
主力商品が他社の特許権を侵害した場合は、その企業にとって致命的な不利益になりかねません。

商品やサービスのネーミング・ロゴを商標登録する際、同一または類似の登録商標が存在しないか、事前に調査しましょう。
商標登録した後は、模倣品対策を徹底することも必要になります。

優越的地位の濫用(取引先などに対して不当に不利益を与える行為)

優越的地位の濫用とは、取引の中で優越的地位にある者が、取引先に対して不当に不利益を与えることを指します。
これは独占禁止法で禁止されており、当該行為の差止め、契約条項の削除その他必要な措置を命じることや、課徴金の納付を命じることもできます。

取引相手に対し、派遣費用を負担せずに、従業員の派遣を要請することは禁止されています。

不適切な景品表示(消費者に誤認を与える広告・宣伝など)

実際よりも良く見せるような過大な景品*類の提供があると「これはいい商品(サービス)だ」とつられて購入してしまい、消費者が不利益を被ってしまうケースがあります。

「景品表示法」は、商品・サービスの品質、内容、価格などを偽って表示することを厳しく規制し、また、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限しています。

たとえば、国産有名ブランド肉であるかのように表示して販売していたものの、実際にはそのブランド肉ではない国産牛肉だったケースなどが該当します。

ダイエット商品の効果を、利用者の体験談やアンケートにより「食事制限することなくやせられる」かのように表示。
しかし内容はねつ造されたもので、しかも実証データに根拠がないものだった場合も、不当、虚偽のデータですから犯罪行為です。

  • 調査結果がないのに、「リピート率」「満足度」などの数字を挿入
  • 機械で生産しているのに「手作り」と表記 などです。

過重労働

過重労働は労使間で定めた時間外労働の範囲を大幅に超える状態を指します。
月100時間、または2~6カ月継続して月80時間を超えてしまうと、過重労働とみなされます。

過重労働がひとたび問題になれば、企業は安全配慮義務違反による損害賠償責任を負うばかりか、労働基準法違反として刑事罰を受けることにもなります。
そのうえ会社の評判がひどく傷つき、ブラックなイメージが世間から持たれることになります。

法務の視点としては、長時間労働の実態について経営層に報告するとともに、速やかに改善を図ることが必要です。
その実施状況は定期的にフォローをし、対応が不十分な部門には指示監督を強化するなどの対応が必要です。

セクハラ 

セクハラとは、性的いやがらせを意味し、男女を問わず加害者・被害者になりうるハラスメント(いじめ)です。
組織としての生産効率が落ちるだけでなく、企業イメージが低下して採用面や人材の定着面でもダメージを受けます。

なお、セクハラがあると認められると、加害者が不法行為による賠償責任を負うだけでなく、会社も使用者責任や安全配慮義務違反の損害賠償責任を負うことになります。

法務リスクは経営に直結する重大事項

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しかし、経営者が見落としがち、すぐに影響が出ないものもあり、優先順位が低くなりがちです。

まじめに経営をしていても、しっかりと理解していないために足元をすくわれ、大きな問題に発展、法務リスクを怠り、経営陣が辞任するケースが後を絶ちません。

前述の一般的な法務リスクのほかに、即刻社会や市場から退場を余儀なくする法務リスクをご紹介します。

財務諸表の虚偽記載

意図的に虚偽をするのは、論外で犯罪です。

ここでお話したいのは会計処理の決定時点では、違法でない処理をしているにもかかわらず、国際財務報告基準、会計基準の大きな枠組みの中で事後に監督当局と見解の相違が発生し、問題となるケースです。

対策は専門家の意見を十分に聞き、取締役会などで会社としてしっかり議論し、問題がない処置であることがしっかり説明ができる状態にしておくことです。

反社会勢力との関係

反社会勢力とのつながりを積極的に求めたり、維持したりすることは論外で、こちらも犯罪に加担するケースもあり、論外です。

しかし近年は、反社会勢力とは知らずに付き合い、それが判明して関係を切ろうとして、問題が発生するケースと、関係を切ることによる報復を恐れ、関係を切れずにいるケースもあります。

反社会勢力とのつながりがあることで、金融機関からの融資、取引がストップしてしまうケースもあり、即時倒産というケースもあり得ます。

対策は、現在過去の取引に関して、反社会勢力との付き合いがないかチェックすることです。

反社会勢力との付き合いが判明した場合は、警察や金融機関にも事情を説明し、関係を断つことしかありません。

海外での企業活動に伴う法的リスク

日本企業が海外に進出するのが当たり前の昨今、売り上げ比率も海外向けのほうが高い企業も多く出てきています。
海外との複雑な取引が発生することも珍しくありません。
海外では、集団訴訟、カルテルや海外の公務員等に対する利益供与(わいろ)にも注意する必要があります。

また、海外の法律が変わるタイミングを把握しておらず、以前は合法だったが、法改正後は、違法になる取引を継続してしまっているケースも散見されます。

中国や発展途上国は法務当局との交渉も難しく、さらに予測も難しいケースが多いです。

こちらから要望していないが、法外な追徴金を請求され、それを免除するために、わいろを要求するケースも発展途上国ではかなり多いです。
外国の公務員に対しての利益供与は、海外の話だけで終わらず、日本でも処罰対象となる点は注意が必要です。

法務リスクは根本的にどのような対策が必要か

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法務リスクは営業活動、生産活動と違い、後ろ向きな活動にとられがちです。

しかし、法務リスクを怠ることで企業が立ち直ることができない傷を負ってしまうこともあり、非常に重要です。

経営陣がどこまで真剣に法務リスクと対策について考えているかが重要です。

とはいえ、法務リスクがあるということで、企業活動を大きく制限したり、二の足を踏んでしまうことは避けなければなりません。
また、法務リスクについては、一般社員に責任を取らせることはせずにすべて取締役決済とする必要があります。
法務リスクを恐れて、企業活動を制限し、企業が発展できないとなるケースが多いです。
法務リスクは課題を厳しくすることで防げることも多いため、社員への教育も重要です。

コンプライアンス違反はもってのほかですが、日頃より風通しの良い会社にし、息苦しい会社にしない経営陣の努力が必要です。

売り上げ目標が厳しすぎて、架空売り上げを上げてしまう、コストダウン要望が厳しく、表示内容に虚偽を加える、社員の離職率が激しく、1人にかかる仕事量が多く荷重労働となってしまう。
さらに人がいないので、企業内の風通しが悪く、セクハラやパワハラなどが常習化する。
このような負のスパイラルを作らせないことこそ、法務リスクを最小化する秘策であると考えます。

まとめ

法務リスクをまとめてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

品質管理を徹底する、個人情報管理を徹底する、こうしたリスクマネジメントは、取引先企業や金融機関その他ステークスホルダーの評価を高め、会社に好循環をもたらします。

ずさんな管理、いい加減な対応、対応の後回しを行うことが長期的な企業の利益につながらないことをしっかり経営陣が理解し、法務リスクを後ろ向きなリスクと考えず、そのリスクは転換可能で、企業の長期的な利益につながると考えましょう。

企業法務を弁護士に丸投げしてしまうことも一つですが、弁護士はあなたの企業の社員でない場合が多いです。
他社の人間がリスクを防ごうとすると、その企業にそぐわない管理方法を提案したり、ガチガチに厳しいルールを作ってしまうことになります。
企業法務は、企業を筋肉質にする、永続させるために欠かせないものです。
経営者の皆さんはアンテナを高く張り、企業と社員が働きやすい企業にすることが求められます。

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