社用車を使用するリスクとは?会社のリスク、個人のリスクを解説

社用車を使用するリスクとは?会社のリスク、個人のリスクを解説 労務リスク

会社の公用車である社用車、専属の運転手もいるところが多く、タクシーや公共交通機関を使うよりも便利です。

運転手の給料が固定給ならば、さまざまな場面で運転をお願いすることで、コスパ良くかつ小回りが利く移動ができるようになります。

しかし、社用車を使うことはメリットばかりではありません。社用車を使うことで発生するリスクもあります。

今回は社用車を使うことで発生する会社と個人、それぞれのリスクについて考えます。社用車があるからなんでも使ってよいということにはならないことを知っていただければと存じます。

それでは解説します。

社用車を利用する会社と個人のリスク

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まず、社用車を利用することで起きるリスクについて確認します。社用車を「会社の営業時間内」に利用するのと「会社の営業時間外」に利用するのではリスクが異なります。

簡単に言うと、営業時間内であれば、何か起きた場合「運転した本人」(専属運転手or社員)に加えて、会社の法人としての責任も問われます。

一方営業時間外に個人(おそらく社員や役員)が勝手に社用車を使ってトラブルが起きた場合も一定の責任を負うリスクがあります。「会社は知らなかったし、業務に関係ないから責任がない」ということは難しいのです。

これについては後述しますので、まず社用車を使うことの会社と個人のリスクについて理解しておきましょう。

社用車を利用する会社のリスク

社用車を所有し、業務に使っている会社のリスクとしてまず挙げられるのが交通事故です。人命にかかわる事故を起こしてしまえば、会社の使用者責任になります。「〇〇株式会社の車が交差点で・・・」などと報道されれば会社に対するイメージは最悪になりますし、損害賠償請求や裁判などが重くのしかかります。

タクシーや公共交通機関であれば、事故が起きても(起きないことを祈りますが)、会社や従業員の責任にはなりません。利便性は社用車の方が圧倒的に高いですが、事故が起きた時の責任を考えるとすべてにおいてメリットがあるとは言い切れない面もあります。

また、社用車の運転手をどうするかも考えなければなりません。専属の運転手を雇うのか、運転できる社員に命じるのか、後者の場合業務命令として運転させていた場合に不可抗力の事故(もらい事故)が起きて、運転手がけがをした場合、後遺症が残った場合などは重大な労災案件になります。

もちろん、それで亡くなってしまった場合の会社の使用者責任は重大です。

車両管理も大切です。社員や役員が大勢いるのに、社用車が少ない場合、社用車の利用管理をしっかりしないとダブルブッキングになります。また、帰り道に渋滞に巻き込まれて次の人が社用車で出発できないということも起きえます。

急遽タクシーに切り替えれば何とかなりますが、そういう時間管理が不適切な会社は、こうした連絡もうまくいかないことが多いのです。

最後は車両のメンテナンス、維持コストです。当然、社用車なので会社のお金で購入し、車検に出し、ガソリンを入れ、不備があれば修理に出します。寒い地方では冬になるとスタッドレスタイヤへの交換も会社のお金で行います。

自動車保険にも会社の金で加入します。対人、対物双方に加入しないと何かあった時のリスクヘッジができません。

そこまでして社用車を所持し、メンテナンスする価値があるのか考えてください。車両に不備があり事故を起こしたときには、責任はさらに重たくなります。

結果として社用車を利用することで

・運転者の管理(無事故)
・運行の管理
・車両の管理

の3つのリスクを負うことになります。これらを背負えない場合、タクシーや公共交通機関を使って従来通りの移動になります。会社の規模によってはこの方がメリットがあります。

社用車を持つ、一択ではないので注意してください。

社用車を利用する個人のリスク

社用車を利用する個人のリスクですが、業務時間中に職場の指示で運転する場合でも、運転手として損害賠償責任を負います、人身事故であれば重大な責任になりますし、交通違反は自家用車で起こした場合と同じです。当然、一発で免許取り消し、免許停止となる可能性もあります。

ただし、会社の業務としての事故なので、会社が入っている自動車保険から賠償金を支払うことになり、個人として自腹で損害賠償を負うケースは少ないです(故意に人を跳ねたりすれば別ですが)。

会社側から給料の〇%を賠償金として差し押さえられるこということもありません。

しかし、個人で社用車を運転するメリットはあまりなく、可能ならば専属の運転手等を雇ってもらい、その人たちに願いできれば良いはずです。役員等に随伴して社用車で外出する際には、車両管理のみを個人でできるようになるのがいちばんです。

一方、業務時間外、プライベートで社用車を利用する場合、リスクしかありません。会社公認で、プライベート利用を認められていても、事故を起こせば個人の責任になります。会社公認の場合、会社側にも運行供用者責任があり、損害賠償の一部を会社負担になる可能性があります。しかし、一義的には本人の責任になります。会社公認であっても可能な限り、プライベート利用は避けるべきです。

さらに、会社に無断で社用車を利用した場合、事故を起こせば100%自分の責任になります。また、事故やトラブルが起きなくても、無断でのプライベート利用がバレれば、就業規則等の違反になり懲戒処分などのペナルティの対象になっても文句は言えません。今後の昇進等にもかかわるかもしれません。

社用車を持つことで、事故やトラブルが起きた場合の損害賠償や社外への風評リスクは回避できません。

人間が運転する以上、リスクはあり、社員に運転させるのか、専属の運転手を雇うのか、専属の運転手であっても事故リスクはあり、そうなった場合会社の責任になります。

利用頻度や使い方などをよく考えて、社用車を持つかどうかの可否を決めてください。社用車を持たないデメリットが持つリスクよりも低いケースも十分あります。

使用者責任と運行供用者責任

社用車による事故やトラブルの責任はケースによって分かれます。

・業務時間中に公用で起きた場合:運転手の責任、会社の使用者責任、会社の運行供用者責任
・会社が認めて従業員のプライベート利用で起きた場合:運転手の責任、会社の運行供用者責任
・会社に無断で従業員のプライベート利用で起きた場合:運転手の責任+(会社の風評、ネガティブな口コミ)

社用車を導入する会社としては、どこまで許容するかになります。運行供用者責任の方が使用者責任よりも範囲が広く、社員がプライベート利用した場合、会社の許諾をしても事故ならば適用されます。

社用車を導入する会社としては、どこまで許容するかになります。運行供用者責任の方が使用者責任よりも範囲が広く、社員がプライベート利用した場合、会社の許諾をしても事故ならば適用されます。

 運行供用者責任使用者責任
損害賠償の範囲交通事故による物的損害と人的損害の全て(物損&人身)交通事故による人的損害のみの賠償(人身)
損害責任を負う者の範囲・従業員の雇い主や指導監督する立場にある者
・商号や名義の使用を認めていた者
事故を起こした従業員の雇い主、自動車の所有者・保管者・賃貸人・賃借人など
立証責任の負担加害者の4つの事実について証明が必要。(立証責任)被害者が使用者責任で求められた事実の証明をすることなく、損害賠償の請求が可能

運行供用者責任と使用者責任は別の法律で定められたものですので、責任はそれぞれに発生します。

社用車のリスクを減らすための事前対策

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社用車はたとえ業務に限定していてもリスクをゼロにはできません。少しでもリスクヘッジにつながるための事前対策を考えます。

専属の運転手を雇用できないか?

社員が運転するよりも専属の運転手で経験豊富な人を雇えないか考えてください。他社の社用車の運転手だった人でもいいですし、公的機関の運転手、あるいはタクシー運転手の経験がある人でも構いません。

大型車やワゴン車が社用車の場合、バス運転手の経験がある人などを雇ってもいいでしょう。

幼稚園バスの痛ましい事故からもわかるように、素人が社用車を運転するのは、交通事故以外の面でも大きなリスクがあります。

業務用ドライブレコーダーの設置

自家用車ではなく「社用車」なのですから、業務で使う大切な自社の財産です。その財産を守るためにも、業務用ドライブレコーダーを設置しましょう。

業務用ドライブレコーダーで事故のリスクを減らします。AIによる防止最新技術で危険運転を防ぎ、万が一の事故の場合にも迅速、適切な対応を可能にする、非常に優秀なシステムを搭載しています。

わき見運転、あおり運転、居眠り運転等の危険運転を自動検知し、アラームで知らせます。自家用車にこれを搭載するのは負担が大きいですが、社用車ならば会社の経費で購入できます。

本当にいざという時のリスクを考えれば、高い買い物ではないはずです。

社用車利用の社内ルールを整備する

なんとなく社用車について「なぁなぁ」で運用されていないでしょうか?プライベート利用を認めるのか認めないのか、認めないのが一義的には正しいですが、社員のプライベート社が車検時など例外規定を定めるのも1つの「福利厚生」になります。

また、社用車を使う場合、間隔をどのくらい空けるのか、誰ならば社用車を使ってよいのか、役員限定か、部課長もOKなのか、一般社員も空いていれば認めるのか、あまり限定しすぎると社用車を購入し維持する意味がないかもしれません(役員はタクシー等で十分)。

一方、誰でも社用車利用OKにすると、いざという時に役員が使えない、急な用事に対応できないなどデメリットも生じます。

社用車を導入するならば、しっかり社内規定を事前に整備してください。

社用車のリスクを最小限にとどめるためのポイント

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社用車そのものにリスクがあるわけではなく、社用車の利用の仕方次第でリスクにもメリットにもなります。上手に社用車を使いこなすためのポイントをまとめました。

車両管理システムの導入

実際の運転以外のリスクである「運行管理」と「車両管理」のリスクは、我々の努力で限りなくゼロにできます。そのため「車両管理システム」を導入し、車両現状や利用スケジュールを社員が共有できるようにします。

車両情報として、自動車保険の期限や加入歴、燃料の管理、専属の運転手の勤怠などを把握できれば、個々の情報を検索する時間が省略できます。

このシステムは、日々記録される運転者の走行距離や運転傾向などのデータをも集めます。運転傾向を把握することで、事故のリスクも結果的に減らします。社員が運転している場合、運転させない方がいい社員もわかるかもしれません。

業務上発生した事故やトラブルに対して過度な厳罰で対応しない

人身事故は絶対に避けなければなりませんが、少しガードレールをこすることなどは人間が運転している以上あります。

何か事故があった場合、基本的に賠償は会社で入っている自動車保険から支出します。「ペナルティとして給料の〇%を引く」「10万円の罰金」などを就業規則に定めることは、「損賠賠償予定の禁止」(労働基準法16条)に抵触するため違法です。

過度に運転者にプレッシャーをかけるのは却って委縮して、危険運転を招きかねません。

もちろん、会社に無断でプライベート利用して事故を起こした場合の懲戒処分として、「減給〇%」というのはありえます。

そうではなく、業務として運転し、故意や重過失ではなく対人事故でもない場合、過度な厳罰で追い込むのは却ってよくないということです。

軽微な事故でもしっかり報告させ振り返る

「ヒヤリハット事例」「ハインリッヒの法則」にあるように、軽微な事故がのちに重大事故を招きかねません。事故に対してペナルティを科さないのと、報告させないのは違います。

しっかり報告した方が加点になることを周知させ、事故やトラブルを報告させましょう。エンジンから変な音がするなど、車体トラブルも大事故の引き金になりかねません。

運転者を批判するのではなく、ミスを怒らず、むしろ報告するのを評価するようにすれば、問題点を社内で共有でき、事故などのリスクを減らせます。

まとめ

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社用車を導入することで、公共交通機関などを使わずすぐに移動でき、急な用事にも対応できます。

電車事故などで動かなくなるリスクもなく、タクシーが来ないリスクもありません。会社で費用負担できるので、自家用車よりも高性能な機器も付けられます。

一方で最大のリスクである事故、特に対人事故を絶対に起こさないようにしなければなりません。そのためには公用車の運転手経験のある人を専属で雇うなどリスクヘッジが必要になります。社員に運転させる場合も、過度なプレッシャーを与えないようにします。

どこまでプライベート利用を認めるのか、あるいは一切認めないのか、誰の移動に社用車を使うのかなど事前に整備すべき問題もあります。

維持コスト、メンテナンスや修理も必要になります。簡単に社用車を持つと決めるのではなく、時に専門家の意見も聞きながら慎重にご判断ください。

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