労働基準法違反とは?違反の種別と代表的な事例まとめ

労働基準法違反とは?違反の種別と代表的な事例まとめ 労務リスク

労働基準法は会社と労働者の労働時間や休暇、賃金など、労働についての最低基準を定めた基本的な法律です。
日本の場合、会社に尽くすことで年功序列賃金や終身雇用が維持されていたこともあり、多少の労働基準法違反(長時間残業やサービス残業、休日出勤など)は黙認されてきた時代もありましたが、法律違反で本来は罰則対象です。

昨今のさまざまな事件やコンプライアンス意識の高まりで、もはやそのようなものが「なぁなぁ」では済まない時代になりました。
「当然」と思っている労働環境、慣習も労働基準法違反の場合があります。

今回は労働基準法違反について、違反の種類や代表的な事例について紹介し、みなさんの危機意識を喚起します。

ぜひ労働基準法違反の地雷を学んでください。

労働基準法違反の罰則

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労働基準法違反の罰則は大したことないと思っている方がいたら大間違いで、最悪の場合懲役刑を受ける可能性もあります。

今一度、労働基準法違反の罰則を確認します。

労働基準法を守らない場合、会社に対して労働基準法違反に対する罰則が与えられるだけではなく、事業主(経営者、個人事業主も含む)個人に対しても罰則が与えられる可能性があります。

労働基準法の規定はミニマムであり、これよりも好条件の規定(週休3日など)であれば問題ありませんが、これよりも悪条件(月休1日など)は労働基準法に違反ということで罰則の対象になります。

労働基準法違反の内容、種類ごとの罰則は下記のようになっています。

労基法違反の内容・種類罰則
強制労働の禁止1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金
中間搾取の排除 最低年齢 坑内労働の禁止1年以下の懲役または50万円以下の罰金
均等待遇 男女同一賃金の原則 公民権行使の保障 賠償予定の禁止 前借金相殺の禁止 強制貯金 解雇制限 解雇の予告 労働時間 休憩 休日 割増賃金 年次有給休暇 年少者の深夜業 年少者・妊産婦等にかかる危険有害業務の就業制限 産前産後 育児時間 療養補償 休業補償 障害補償 遺族補償 葬祭料 寄宿舎の設備および安全衛生 など6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金
契約期間 労働条件の明示 貯蓄金の返還命令 退職時の証明 金品の返還 賃金の支払い 非常時払い 休業手当 出来高払制の保障給 変形労働時間制協定の届け出 みなし労働時間制・裁量労働時間制協定の届け出 年少者の証明書 未成年者の労働契約 帰郷旅費 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置 就業規則の作成および届け出の義務 制裁規定の制限 法令等の周知義務労働者名簿 賃金台帳 記録の保存 など30万円以下の罰金

労働基準法違反は懲役刑を受けない、実際にそんな例はないとイメージされがちですが、最高10年までの懲役刑を受ける可能性があります。

実際に刑に服するケースはまれですが(懲役〇年でも執行猶予が付く)、当然刑事罰なので逮捕され留置されます。
労働者に対する仕打ちに対して刑が軽すぎるという世論もあり、今後重罰化されるかもしれません。

当然逮捕されれば、氏名がメディアに公開され、今後の事業活動に致命的な影響を受けます。
実際に収監、懲役刑に服さなくても「あの会社は労働基準法違反で摘発された」という情報はSNS社会では瞬く間に拡散します。
隠すことはできず、労働基準法違反の十字架を背負いっていくことが宿命づけられます。

そういうことがないよう、労働基準法違反の事例をしっかり学んでください。

代表的な労働基準法違反の種類と内容

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労働基準法違反には罰則(刑事罰)があり、実際に刑に服する可能性がある、もし逮捕されれば事業継続が厳しくなり、経営者失格の烙印を押されかねないということについて、ご理解いただけたはずです。

それでは、労働基準法違反の代表的な事例についてみてきましょう。

事例1:従業員の意思に反した労働、強制労働

嫌がる人、意思に判して無理やり働かせるのは、上の表でもわかるように労働基準法で最も重い罰則になっています。
恫喝、暴力、監禁、あるいは洗脳という手法で無理やり働かせることは重罪です。

労働は従業員の自由な意思によることが大切です。
会社は軍隊ではありません。新入社員研修で山奥の研修所に缶詰めにして、携帯を没収して洗脳するようなやり方はここに抵触する可能性があります。

従業員の意思に反した労働、強制労働をさせた場合、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が科せられます。

事例2:中間搾取

給料のピンハネをすることです、人材派遣会社が派遣先から受け取る報酬の一部を手数料として受け取ることは違法ではありませんが、通常の会社が従業員の給料を「場所代」「仕事あっせん代」などの名目で中間搾取、ピンハネすることは労働基準法違反になります。

保険料や年金など決められた項目以外に、給料から控除する場合、その項目が中間搾取に該当しないか事前にしっかり確認してください。

中間搾取を行った場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

事例3:従業員への違約金支払いの強制

「ミスしたから罰金1000円」「ノルマを果たせなかったから罰金1万円」みたいに、従業員へ違約金(罰金)を科すことも労働基準法違反です。

もちろん、従業員の故意または重過失で器物を損壊した場合に、相当額を弁償させるというのは、違法にならないこともあります。
飲食店で手が滑ってお皿を割った場合は業務上仕方ないことですので、罰金を科せば違法です。
しかし、わざと「バイトテロ」のようにお皿を割ったり、食材を捨てたりした場合は、相当額の弁償や懲戒処分を行えます。

違約金、罰金を払わせるような内容が含まれる雇用契約の締結も違法です。

従業員へ違約金支払いを矯正した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

事例4:予告なしの解雇

企業が従業員を解雇する場合、原則として30日以上前に解雇の予告を行う必要があります。
解雇の予告ができない、ない場合は、平均賃金の30日分以上を従業員に支払うことが必要です。

例外的に、事業の継続ができない場合(急な倒産)や、従業員の現行犯逮捕などで懲戒解雇する際には予告なしの解雇が認められることもありますが、あくまで例外です。
原則は解雇する際は予告or30日分の給料支払いが必要です。

予告なしの解雇で手当の支給もない場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

事例5:法定労働時間を超えた労働

最近問題になっている時間外労働(残業)です。

労働基準法の原則は「1日8時間、週40時間を超える労働をさせることは原則としてできない」です。
残業はあくまで例外的に認められるもので、会社(経営者)と労働者代表(労働組合に限らない)が、労働基準法第36条にもとづくいわゆる「36協定」を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。

残業は労使が合意し、届け出た場合の例外的措置なのです。
日本の経営者の中には「残業は当然」という認識がありますが、法的には間違いです。

もちろん、残業(時間外労働)に対しては割増賃金を支払います。
また、労働時間を超えて労働できる時間は、原則月45時間、年360時までとなります。

法定労働時間を超えて労働を強いた場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

事例6:労働条件が明示されていない

労働契約を締結する際、使用者(経営者)じゃ労働者に賃金(月給〇〇万円、や労働時間(9:3-~18:00など)、賞与、交通費支給など一定の労働条件を明示しないと労働基準法違反になります。

労働者がどのような条件で働くのか自分でわからないままに労働契約するのは、労働基準法違反となります。
当然、ブラック企業の中には、あえてわからないようにして契約させるところもあります。

こうした労働契約をした場合、30万円以下の罰金刑に処されることになります。

労働者側が契約書の内容と実際が異なることに気付けば、労働契約を(一方的に)取り消せます。

事例7:休憩をとらせない

あまり意識しませんが、従業員には休憩を取らせることが使用者の義務に成増。
休憩をとらせない場合も、労働基準法違反と指摘される可能性があります。

従業員の労働時間が6時間を超えるときには45分以上、8時間を超えるときには1時間以上の休憩が必要です。
通常は昼休憩(ラインチタイム)でそれに充当しますが、例えば「ランチタイミングミーティング」と称して、昼食を食べながらでも会議する場合は労働時間になる可能性があります。
つまりミーティング後、休憩時間を与えないと違法となるかもしれません。

休憩時間中に仕事をさせたり、従業員の行動を制限したりすることは基本的にできません。
昼の電話番は本来労働時間であり、正しいやり方は、お昼当番(電話番等)を置き、その人は通常の昼休み前後に別途昼休みを取らせることです。

従業員に休憩をとらせない場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

事例8:休日をとらせない

休憩よりもさらに重大なのは休日を取らせないことです。企業は、原則として従業員に少なくとも4週間で4日以上の休日を与えることが必要です。
1か月3日しか休日がないのは労働基準法違反になります。
もちろん、この規定はミニマムであり、今時4週4休の会社に応募などないでしょう。

従業員に休日をとらせなかったことがわかると、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金になります。

事例9:有給休暇を与えない、取らせない

働き方改革の一環で、企業には有給休暇を一定日数(年間5日)取得させる義務が生じました。
その義務違反、あるいは、勤続期間が半年以上となった労働者に有給休暇を付与しなかった場合に、労働基準法違反になります。

有給休暇には時季変更権があるので、その日会社の業務上厳しい場合は、変更してもらうことはできますが、後日取得させないのはNGです。

有有給を与えなかったら場合や取得を拒否した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑です。

事例10:社会的な身分や性別で差別した

性別で採用や昇進を差別することは労働基準法違反になります。
採用にあたり、その性であることが重要なもの(ホスト、クラブ、コンパニオンなど)や、巫女さん(女性であることが必須)、助産師(男性は資格所得できない)、炭鉱労働者(男性しか働けない)など以外の性差別は労働基準法違反になります。

それ以外にも社会的身分、門地などで差別すると大事になります。

違反した場合には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑となります。

事例11:産休・育児時間をとらせない

従業員から産休や育児時間(生後満1歳に達しない生児に対し1日2回、各30分以上)を取得たいという申し出があった場合、企業は拒否できません。
また、産後6週間経過後に本人が希望し、かつ医師が認めた場合を除き、産後8週間以内に従業員を就業させられません。

なお、産休は労働基準法の義務ですが、育休(育児休暇)は理宇同基準法ではなく、育児介護休業法の範疇です。
しかし、育休を取らせない会社はその時点でダメな世の中になっています(行政指導の対象になります)。

産休、育児時間を拒否した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

事例12:残業代の未払い

残業は36協定を結んだうえで「例外的に」可能になる措置です。
時間外勤務、深夜勤務、休日出勤をさせた場合、割増賃金を加えて残業代を支払わなければなりません。

「〇〇時間以上の残業代は出ない」というのも違法です。
時間外勤務の割増率は通常25%、深夜勤務は50%、休日出勤は35%です。

時間外労働をさせたら、残業代を通常の賃金に割増、上乗せして支払わなければなりません。

残業代未払いの場合、その残業代を追加支給することに加えて、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金になります。

最近は未払い残業代請求を得意とする弁護士も増えてきて、一大ビジネスになっています。

事例13:就業規則の未作成・届出違反

10人以上の従業員がいる会社で就業規則を作成しない場合、労働基準法違反になる可能性があります。就業規則を作成し、過半数労働組合又は過半数の労働者代表の意見を聞き、その後就業規則を所轄の労働基準監督署長に届け出ます。
さらに、制定した就業規則は、就業規則は従業員が確認できるよう、周知(紙で配る、社内イントラに掲載するなど)が必要です。

就業規則未作成で、労働基準監督署長に届け出がない場合、30万円以下の罰金になります。

これ以外にも炭鉱労働関連は「女性禁止」「未成年禁止」などがありますが、現在担当で働く人が少ないので割愛しました。

労働基準法違反は身近なリスク!しっかり把握しよう

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以前のように「なぁなぁ」で済ませられなくなってきてるのが従業員との雇用関係です。
労働基準法違反は簡単に取り締まりの対象にます。

未払い残業代請求や退職代行が大きなビジネスになっていることからも分かるように、多少の理不尽を我慢して会社に尽くすというマインドはなくなっています。

労働関係は欧米せざるを得ず、しっかり契約書を作らないと、いつ弁護士からの請求や労働基準監督署からの問い合わせがあるかもわかりません。

今一度、自社の労働環境について現状認識をお願いします!

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