取引先からの支払いの遅延にはどう対応する?未納リスクを解決するための方法とは?

取引先からの支払いの遅延にはどう対応する?未納リスクを解決するための方法とは? 財務リスク

取引先からの支払い遅延、言い換えると売掛金の回収が遅れてしまうと、自社の経営に大きな影響があります。

売上として資産計上しているのに支払いがないと、不良債権化してしまい、一気に自社のバランスシートがおかしくなります。キャッシュフロー不足になるので、機動的な投資や他社への支払いができなくなります。

借入がある場合、返済原資がなくなるリスクもあり、単に「取引先からの支払いが遅れた」では済まない、倒産や不渡りの可能性も浮上します。

支払い遅延を放置していると、自社の経営に対して重大な影響を及ぼします。体力が減るだけではなく「即死」リスクもあるため放置できません。

今回は取引先の支払い遅延対策について考えます。

支払い遅延を確認したらまずすべきこと

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売掛金の入金日を過ぎても自社の口座に支払いがない場合、支払い遅延ということになります。支払い遅延を確認したら、まず以下の流れで対応してください。

請求書の内容を確認する

取引先が支払い遅延したのではなく、請求書の入金日が間違っているのかもしれません。そうなれば自社のミスになり、取引先は悪くありません。あるいは、メールや郵送で請求書を送っていなかったのかもしれません。自社のミスであれば、こちらが平身低頭して、支払いをお願いしなければいけなくなります。

あるいは、請求書の内容について、ほかの担当者や代表メールなどに問い合わせがきていないかも合わせてチェックします。取引先が「本当にこの内容でよいのか、社内決裁が取れない」と迷っているから支払いできない可能性もあります。

この段階で、支払い遅延が発生していることを、担当部署や営業部、会社上層部と共有します。

1日〜2日待つ

ひょっとすると先方の担当者がうっかりしているだけかもしれません。念のため翌日、その翌日くらいまで支払いを待ってみます。

もしそれでは自社のキャッシュフローが危ないという場合は、翌日にも次の項(先方担当者へ連絡)に行ってください。

先方担当者に連絡

支払い遅延について、自社に瑕疵や落ち度はなさそうだと確信できれば、先方取引先の担当者に支払い遅延について連絡します。電話かメール、どちらでも構いません。

先方は「速やかに対処します」と言って何らかの原因を告げるはずです。請求書の再発行を求められた場合は、再送します。必ず入金日について言質を取ってください。また、新しい入金日については社内で共有します。

取引先が告げた原因が本当かどうかわからないので、あまりに支払い遅延を繰り返すならば、別の原因を考えるべきです。詳しくは次項で紹介します。

対策の前に「支払い遅延の原因」を調べること

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対策を講じる前にすべきことは支払い遅延の原因究明です。相手の言い分だけではなく、業界の評判なども合わせて考えます。

事務的なミスの場合

担当者のうっかりミスなど単純ミスならば、すぐに支払いがあるはずです。これはお互い様な面もあるので、あまりことを荒立てず矛を収める方向でよいのではないでしょうか?

あまり厳しい対応をしすぎると、こちらの商品に瑕疵があった場合などに仕返しされます。良好な関係を維持するためにも、ここは穏便に行きましょう。

請求や契約の認識に齟齬があった場合

契約内容や支払日、支払いサイトなどに食い違いがあった場合、お互いの意思疎通、コミュニケーションができていないことになります。

今一度両者で話し合い、その過程も含めて書類やデータに残してください。「言った、言わない」を避ける意味でも、今一度気を引き締めて、新規契約をするつもりで話し合ってください。

このケースの場合、どちらにも落ち度があることになります。

取引先に支払資金がない、キャッシュフローが悪化している場合

売掛金を期日に支払いたくても現金、キャッシュフローがない場合、これが問題になります。払いたくても払えないくらい取引先の経営が悪化している場合、不渡りや倒産リスクを抱えたまま取引を続けることになります。

このケースに該当する場合、自衛策を講じることが必要です。詳しくは「支払い遅延をする取引先への対策」の項で述べます。

支払日延期を要請された場合

取引先から「経営が苦しい、もう少し待ってほしい」「我々(取引先)の売掛先に問題があり、こちらもキャッシュフローがない」など泣きつかれるかもしれません。そうした場合も、安易に了承をせず、できれば「保全措置」を要求しましょう。

個人保証(取引先の経営者を保証人にさせる)や不動産担保をとる、動産・債権譲渡登記を求めるなどの手段があります。

この手続きを行う際も、弁護士が仲介しないと難しい面もあります。まず、取引している銀行の営業の人などに「こういう取引先があり困っている。動産担保登記などについて教えてほし。窓口紹介でもいい」など聞いてみましょう。

もし、今後も取引先を続けたい場合、この要請を受け入れる方向で検討しますが、もう関係を切ると決めた場合は、次項の法的手段に即移っていただいて構いません。

いくら待っても支払いがないときはどうする?

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いくら待っても支払いがない、先方に催促してもはぐらかされる、あるいは連絡がつかなくなった場合には法的手段を検討せざるを得ません。売掛金が数万円で、諦めるというのも1つですが、数十万円、数百万円に及ぶ場合、法的手段をとってでも売掛金を取り戻さないといけません。

具体的には以下の方法をとります。

内容証明郵便の送付

まず、第三者への対抗要件として、法的な「催告」(弁済=支払い期限を設けて「それまでに振り込め」と法的に告げる)として、内容証明付き郵便を送ります。

これによって、相手に債務(売掛金の支払い)の履行を求めたことが法的に証明されます。

これで法的にまずすべきことはしました。先方が「そんなものは届いていない」「請求内容について確認できない」と言っても無駄で、郵便局が公的に内容と発送について証明します。

ここでしばらく待ってみましょう。まともな取引先であれば反応するはずです。なお、ここに至った場合、もはや取引を継続することは難しいでしょう。取引はこれで終わり、最後に取り返すつもりで、内容証明を送ります。

弁護士に債権回収を依頼する

内容証明を送っても支払いがない場合、以後は弁護士マターになります。弁護士費用と未払い金を比較し、前者の方が多いなら、諦める(悔しいですが)のも選択肢になります。取引先を見抜けなかった経営センスを反省することになります。

弁護士に依頼した場合、督促、調停、少額訴訟、(本格的な)訴訟など段階があります。当然、後ろになればなるほど弁護士費用は高くなります。また、訴訟で負ければ未払い金を取り戻すことはできず、裁判所の判断で本来の未払い金よりも減額される可能性もお含みおきをお願いします。

裁判所の判断(判決)が確定すれば法的な強制力を持ちます。取引先の財産は差し押さえられ、公権力によってみなさんのもとへ未払い金が回収されます。

弁護士費用は事前に着手金として15~30万円程度を支払います。

その後、債権が回収できた後、弁護士報酬を支払います。目安は回収額の5~15%なので、全額取り戻せないことに注意してください。30万円程度の未払い金であれば、費用対効果を考えるとこの方法は取れないかもしれません(諦める)。

ただし少額訴訟ならば弁護士に依頼しなくてもできる可能性があります。詳しくは、自治体の無料相談などに聞いてみましょう。

支払い遅延する取引先への対策4選

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うっかりミスであれば仕方ない面もありますが、取引先の経営に問題があり、今後も支払い遅延の可能性がある、下手すると不渡りや倒産のリスクがある場合、リスクヘッジのための対策を取らなければなりません。具体的な対策として以下の5つを紹介します。

契約書の見直し

契約書を見直して、可能ならば「期限の利益喪失条項」の規定や返済遅延の際のペナルティなどを分かりやすく規定します。契約書の内容を見直しことで、見直し後の規定に法的拘束力を持たせます。

「期限の利益喪失条項」とは、契約の一方の当事者に契約書で結んだ事由が生じた場合に、本来の履行期限を待たずに直ちに履行する義務を発生させる条項です。つまり、「複数回の支払い遅延」を期限の利益喪失条項にした場合、複数回支払い遅延が起きた後は、こちらが「すぐに売掛金期限を待たず支払え」と指示すれば取引先は拒めないことになります。

取引先も支払い遅延で負い目があるので、受け入れる可能性があります。なるべくみなさん側が有利な条項を規定できるように交渉しましょう。

与信管理の徹底

経営コンサルタントや信用調査会社などに依頼し、取引先が本当に信用できるのか、経営状態はどうなのかなどを分析してもらいます。

売掛金回収不能のリスクを回避するために、新規の取引先との取引を開始する前に支払い能力の有無を調べるだけではなく、すでに取引しているクライアントも可能な限り再調査します。

金融機関やカード会社が共有している信用情報システムからのデータ提供はないので、100%確実な与信管理にはなりませんが、リスク要因を把握することで、徐々に取引額を減らすなど、リスクの分散ができます。

売掛保証サービスの利用

売掛保証サービスは、取引先の倒産や不渡りによって売掛金が回収できない場合に、保証会社が売掛金の支払いを行うサービスです。

お金を借りて返せないときに信用保証協会が肩代わりして、銀行に返済するイメージです。保険料、保証料を毎月支払い、いざという時にリスクヘッジできる「支払い不能保険」で、毎月の支出はありますが、いざという時には安心して売掛金相当額を回収できます。

ファクタリングの利用

ここ数年トレンドになっているのがファクタリングの利用です。ファクタリングとは売掛債権の有償譲渡であり、支払日到来前に請求書ごと「売掛金を受け取る権利」を第3者のファクタリング会社に買い取ってもらいます。

100万円の売掛先ならば、80万円~90万円で期日到来前に現金化できます。手数料をファクタリング会社に支払うので、全額の買い取りになりませんが、回収できなかった時の貸し倒れリスクも含めて、全部ファクタリング会社に譲渡できます。

ただし、ファクタリングは法規制が緩く、ヤミ金業者や反社会的団体が健全な会社を装っているケースもあるため、しっかり見極めてください。

2社間ファクタリング、3社間ファクタリング、保証ファクタリングなどいくつかの類型に分かれます。

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いろいろな対策を講じてもリスクをゼロにはできません。また、リスクヘッジのためのサービスを利用すると、売掛金全額の回収ができない可能性があります。

問題の取引先に代わるクライアントが見つかれば、その問題の取引先との契約を終了してしまうのも1つです。これなら、根本的なリスク要因を完全に排除できます。

支払い遅延リスクと取引先の信頼関係をしっかり考えてください

人間のすることですので、1回や2回の支払い遅延はあるかもしれません。本当に一時的にキャッシュフローが悪化して、支払いできず、その後持ち直すケースもあります。

いきなり法的措置を行うのでなく、これまでの関係も考慮しながら最適な対策法を考えてください。もちろん、情に流され続け、「なぁなぁ」な対応を行うととみなさんの会社のキャッシュフローが悪化してしまいますので、厳しく対応すべき時はしましょう。信頼関係を維持するのか、冷徹に判断するのかも経営判断になります。

今後の取引を続けていくかどうかでも対応や対策も変わります。リスクヘッジの意味でも、1つの取引先に集中するのは危険なので、取引先の分散も考えながら経営を行ってください。

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