中小企業経営者が知っておくべき節税対策おすすめ8選

中小企業経営者が知っておくべき節税対策おすすめ8選 財務リスク

中小企業の経営にとってさまざまな税金が日々の経営に重くのしかかります。納税は国民の3大義務の1つであり、それを意図的に免れようとする「脱税」は到底許容できるものではありません。

しかし、脱税でない限り、積極的に進めるべきものがあります。会計や税制度を理解し、経費に計上することで課税所得を減らして、結果的に税金の額を減らす「節税」は合法で認められるものです。

上手に節税できることは優秀な経営者の証拠です。脱税と節税の違いを理解しながら、今回は中小企業が知っておくべき節税について考えていきます。

中小企業が支払う法人税とは?

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中小企業が支払う税金の中でも大きな比重を占めるのが法人税です。個人事業主や会社員の「所得税」に相当するのが法人税です。

法人税は中小企業を含む法人の「所得」に対してかかる税金です。法人は事業活動を行い、その中で商品やサービスを販売して得た利益には税金が発生します。

法人税は「益金-損金」=「所得」に一定の法人税率をかけて計算します。法人税率は原則23.2%で、中小企業の所得800万円以下の部分のみ15%となっています。損金は「経費」と読み替えていただいて結構です。

つまり、(課税)所得1000万円の中小企業の場合

1000万円=800万円+200万円
800万円×15%=120万円
200万円×23.2%=46万4千円

合計した法人税 120万円+46万4千円=166万4千円

となります。

確かに利益が1000万円あっても160万円超も税金で持っていかれるのはかなり痛いです。

この法人税の金額を合法的に節税(脱税ではない!)できれば、経営は安定し、利益も上げることが可能になります。

法人の場合は「益金-損金」が所得になります。

  • 益金:1年間に入ってきたお金
  • 損金:1年間に出ていったお金

です。個人事業主の場合は「売上」をもとに所得税を計算しますが、法人は「益金」をもとに法人税を算出します。

益金と売上の違いを説明すると長くなるのですが、例えば、無料で土地や機械をもらった場合、売上にはなりませんが益金にはなります。個人事業主から法人化した場合、その違いを意識しないと思わぬところで躓いてしまうかもしれません。

「脱税」や「租税回避」の違い

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節税と同じように税金を減らす方法として「脱税」や「租税回避」という方法があります。脱税はもちろん違法行為で追徴課税や刑事罰の対象となりますが、租税回避は聞きなれない言葉です。

それぞれの違いについて表にしました。


内容
節税法律の範囲内で税負担を減らすこと経費として計上できるものを積極的に計上する合法
脱税課税行為を隠す売上を計上しない、かかってもいないものを経費にする違法
租税回避税法が想定していない形式で税負担を減少させようとする行為でタックスヘイブンに本社を移す。新設法人を利用した消費税の回避脱法

租税回避は即違法とはならないのですがグレーゾーンであり、やらない方がいいです。「パナマ文書」などで明らかになったように、異常に税金が安い国があり、そこに会社を移転することで法人税などを減らす迂回テクニック、タックスロンダリングの手法になります。有名人や有名企業が租税回避して批判されたこともありました。

脱税は言うまでもなく、売上を申告せず懐に入れる、架空の領収証をもらって経費にするなどわかりやすい違法行為です。当然、実際の経済活動に基づかない税務申告となり、国民の納税義務を果たさず重大な違法行為となります。追徴課税も重加算税など多額のお金を支払うことになりますし、刑事事件(逮捕等)の可能性もあります。

中小企業が節税に取り組む必要性

中小企業は大企業と比べて売上も少なく、少ない資金の中でやりくりしないといけません。節税を上手に行えれば、中小企業の内部留保(流動資産)を増やすことができ、いざという時の資金需要に機敏な対応が可能になります。

余剰資金がないと、急な資金需要で借入を受けようとしても間に合わず、一気に倒産の危機に陥ってしまいます。

貸借対照表の「総資産」を増やす意味でも、こまめな節税で損益計算書の「税引き後当期純利益」を増やすことが大切です。流動資産を増やすことで、中小企業の急な資金需要にも対応できます。

中小企業の節税方法8選

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節税するための方法はいくつもありますが、脱税や租税回避に間違われないように、明朗なわかりやすい方法で行う必要があります。

代表的な中小企業の節税方法について紹介します。なお、これは法人化した中小企業(株式会社や合同会社)の節税方法であり、個人事業主は少々異なりますので注意して下さい(個人事業主なら小規模企業共済やiDeCoへの加入も節税対策として使えます)。

未払費用は年度内に計上する

まだ期限が到来しない経費のうち「本来の営業取引以外の継続的な取引から生じる債務」について、決算時未払費用として経費にできます。経費にできれば、損金が増え、所得が減るため節税につながります。

経費に計上できる未払費用は、会社負担分の社会保険料、固定資産税、従業員給与、水道光熱費、新聞代、店舗家賃(後払いの場合)、保険料、電話代、プロバイダー代などになります。確かに継続的に生じる費用ですよね。

出張旅費規程を作成する

出張が多い中小企業の場合、出張の際の交通費や出張手当を定めた「出張旅費規程」を作成することで節税につなげることができます。

簡単に説明すると、出張経費(交通費、電車代、飛行機代等)はもちろん仕事で使うお金なので経費に計上できますが、「出張手当」(社員に支給する手当)についても、「出張旅費規程」を整備することで、非課税にできます。

  • 会社→社員に支給する出張手当も交通費も出張先での交際費も経費にできる
  • 社員→出張手当には所得税も住民税もかからず100%非課税で自分のものにできる

という双方win-winなメリットがあります。

役員報酬を増やす

経営者、あるいはその家族が役員である場合、合理的な範囲で(社員に納得してもらえるラインで)役員報酬を増やすのも節税につながります。

役員報酬は給与所得で当然個人として受け取った役員報酬(給与所得)には所得税と住民税がかかりますが、「給与所得控除」(55万円)を適用できます。つまり、会社の利益を役員報酬として経由させることで、55万円の控除を適用でき、その分節税につながります。

雇用促進税制を活用する

「雇用促進税制」とは、一定の手続きをハローワークで行い、雇用保険の対象となる社員を増やして雇用した場合、

  • 増加した雇用人数×40万円
  • その期の法人税額の10%(中小企業は20%)

どちらか少ない金額を法人税額から控除=節税できる公的制度です。積極的に社員を採用して売上を増やしながら、法人税が減るというありがたい制度で、攻めの経営を行っている中小企業はぜひ雇用促進税制を申請してみてください。

飲食費・交際費を経費にする

私的な飲食を経費にするのは脱税ですが、個人事業主と比較して中小企業(法人)の場合、経費として適用できる範囲が広くなります。

例えば、異業種交流会の飲食費も当然、仕事にかかわるものなので経費にできますし、役員だけの食事会や社員の懇親会も経費として支出できます。

家族や友人と立ち上げた会社の場合、実質家族や友人との飲み会であっても「役員打ち合わせ」として経費計上できる余地があります。もちろん、限界があり、2次会でキャバクラに行くなどした場合はさすがに経費にはできないでしょう。1次会のレストランが限界だと思ってください。

もちろん、異業種交流会でそういう場所に連れていかれた、など合理的な説明ができればその限りではありませんが・・・。

福利厚生費を増やす

原則的に個人事業主では認められていない経費として「福利厚生費」があります。福利厚生費とは、社内イベントの費用や健康診断、スポーツクラブなどの費用です。全従業員が対象になることが条件なので、全従業員にスポーツクラブへの加入を強制するのは変です。

そこで、会社単位で加入する「福利厚生プラン」が良いでしょう。商工会議所の「CLUB CCI」などに代表されるもので、カタログやネットショップ形式で、飲食店の割引やホテルの割引、スポーツクラブの入会金無料などのメニューを従業員に勝手に選んでもらうやり方です。

社員へさまざまな分野の割引クーポンを配布し自由に使ってもらいます。

そのほか、社員旅行なども福利厚生費になりますが、今社員旅行は忌避されがちです。そこで、ある日に「旅行」を計画して(例えばディズニーランド)、確実当日は勝手に行ってもらって、昼食だけ決まったレストランで食べて、あとは勝手に遊んで各次解散、これでも「社員旅行」として福利厚生費になります。

昼食補助も福利厚生費を増やす方法として使えます。社員の昼食費用の一部を会社が支給し、それを経費にできます。社員も喜びモチベーションアップになります。

ただし条件があります。

  • 役員や従業員から昼食代の50%以上を負担していること
  • 会社の負担額が月3,500円(税抜き)以下であること

です。ブラック先物会社のように「仕出し弁当を会社全額負担で支給」の場合、福利厚生ではなく現物給与になってしまいます。社員は税金を引かれる立場になるので注意してください。

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)へ加入

中小企業基盤整備機構が運営している中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)へ加入すると、その積立金が損金として落とせます。

取引先(クライアント)の倒産や経営不振により、売掛金の回収ができず、連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度で、取引先が倒産した場合、無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで緊急時の借入れができます。

小規模企業共済と似ていますが、小規模企業共済は代表者個人の所得から控除され、会社とは関係ありません。個人事業主の場合は似た感覚で使えますが、中小企業の場合、法ゼイン税節税のためなら中小企業倒産防止共済が優先されます。

なお、中小企業倒産防止共済の解約金は益金(益金)となり課税対象になるため注意しください。解約のタイミング次第では節税ではなく増税になります。

退職所得になる小規模企業共済の掛金とは違います。

決算賞与の支給

臨時ボーナスを支給します。売上が上がっていて、課税所得が増えそうな場合、まず社員へボーナス(賞与)として還元します。

決算賞与とは、会社の業績に応じて決算の時期に支給する臨時賞与のことです。夏と冬のボーナスとは区別されます。

決算賞与は損金に算入できるため、利益を従業員に還元することと法人税の節税を両立させられます。条件があるのでそこはしっかり税理士などに聞いてください。

節税対策のポイントとは

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節税対策にはいろいろな方法があることをご理解いただけたと思います。適用できる公的制度や経費をなるべく多く見つけ、損金を増やすことが大切です。

それ以外にも、繰延資産を有効活用し、税率を下げるぎりぎりのラインに持っていくのも極めて節税には有効です。

例えば、繰延資産である「開業費」は任意償却できます。開業費を黒字が多い年に償却することで、法人税の節税どころか、法人税0の赤字決算に持っていくことも可能です。

とはいえ、「節税対策」の名目であらゆる費用を経費計上するのは好ましくありません。無駄使いNGなのは言うまでもありません。経費計上しすぎると、税務調査で「本当に必要なのか?」「これは業務と関係ないのでは?」と指摘されやすくなり藪蛇になってしまいます。経費と認められなければ課税所得が増え、追徴課税されてしまいます。

必要な資金は使わずに内部留保としてため込んでおくのも、中小企業経営者として求められる資質になります。

適切なレベルの節税が重要!脱税にならないように気を付けよう

節税は一歩間違えると脱税になってしまうため、中小企業にとってリスク要因です。
節税にチャレンジせず、損しても税金を多く払うのも1つの選択肢ですが、せっかく合法的に税金を減らして利益を増やせる手段があるのですから、そのまま納税するのは国にとってはありがたいですが、みなさんの会社の体力を弱めるかもしれません。

しかし、節税と脱税の境界、よい塩梅(あんばい)というのは経営者だけの判断では難しい部分があり、顧問税理士など専門家に聞きながら進めてください。

上手に節税して中小企業の体力をつけていきましょう。

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