経営者が死亡したら会社はどうなる?備えておくべき対策を徹底解説

経営者が死亡したら会社はどうなる?備えておくべき対策を徹底解説 その他リスク

経営者の方はバイタリティがあり「生涯現役」という人も少なくありません。大病していない人の中には、80歳、90歳になっても経営者として現場に立ち、会社の指揮をとる人はかなります。

病気の予兆がないから後継者の育成や、自分が亡くなった後の体制整備、遺言の作成などを行わない経営者も少なくありません。
しかし、事故や突発的な病気で死亡してしまうリスクは誰にでもあります。そうした場合会社は大混乱してしまいます。

今回は経営者が死亡した場合に備えて、会社を守り、後継に引き継ぐため、備えておくべき対策を解説します。
これができるのは、経営者が元気な時です。
今からいろいろ動くことが大切なのです。

会社の経営者が死亡した時にすべきことは何?

keieisha-shibou_1

会社の経営者が急に死亡してしまった場合、悲しみに暮れている時間がないというのが正直なところです。

速やかにさまざまな手続きをして会社の存続を図らなければならなくなります。

社員に事情を説明する

まず社内の動揺を抑えるため、社員に経営者が死亡したことを伝えます。
会社の規模によっては、ご家族の葬儀以外にも社葬をしなければならないかもしれません。参加者のリスクとアップなども進めます。

社葬しない場合は、経営者ご家族のお悔やみを第一に進めます。
噂が広まらないよう、取引先にも経営者が死亡したことを連絡します。FAXなどでかまいません。

新社長、代表取締役の選任

社内の動揺が収まれば速やかに後継の経営者を選任します。
後述のように経営者が亡くなってから5日が諸手続きの目安になります。
それに間に合うようにしなければなりません。

取締役会設置会社の場合

取締役会設置会社で、取締役が死亡した代表者を除いて3名以上いる会社は、取締役会を開催して新しい代表者(代表取締役、代表社員)を選出します。

また、死亡した経営者を含めて取締役3名の場合(亡くなった人を除くと2名)の場合、まず取締役3人目を株主総会で選出してから、取締役会で代表を決めます。

代表者を含めて複数名の取締役が事故などで亡くなった場合は株主総会で選出する取締役は複数名になります。

  • 死亡した経営者を除いて3名以上の会社→取締役会で新しい経営者を選出
  • 死亡した経営者を除いて2名(以下)の会社→株主総会で取締役を3名にしてから取締役会で新しい経営者を選出

となります。

取締役会非設置会社の場合

取締役会を設置していない会社の場合、新しい経営者(代表者)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選、もしくは株主総会の決議によって取締役の中から選びます。

代表取締役が死亡し、他の取締役がいる場合、その人たちが新しい代表候補になりますが、名前を貸しているだけなど実質経営に参画していない場合、実務に詳しい新しい代表を取締役として選任しなければなりません。

  • 定款に定める:「代表取締役〇〇が欠けた時は△△が代表取締役」
  • 取締役の互選:残った取締役で話し合う
  • 株主総会の決議:臨時株主総会を開く

のいずれかになります。1人会社の場合は取締役の互選ができないことに注意です。また、取締役の互選は定款に「当会社に取締役を複数置く場合には、代表取締役1名を置き、取締役の互選により定める」などの記述が必要になります。

速やかに新しい代表選出が必要であり、家族経営などでない場合、臨時株主総会の開催は日程が相当タイトになります。

社長が変わったことによる法人登記変更や諸手続き

新しい代表(経営者)が決まったら、会社の登記簿を変更します。

新しい取締役の氏名、代表取締役の氏名及び住所は登記事項なので(会社法911条3項13号、14号)、後任が選任された場合、取締役、代表取締役の登記を変更手続きが必要になります。

法務局に株式会社役員変更登記申請書を提出しますが、その際には以下の書類が必要となります。

  • 登録免許税(資本金1億円超は3万円、1億円以下は1万円)
  • 添付書類(死亡届又は法定相続情報一覧図の写し・臨時株主総会議事録・株主リスト・就任承諾書・印鑑証明書・本人確認証明書)
  • 委任状(代理人に申請依頼した場合)

登記の変更手続きは、変更となる事項が生じた日から2週間以内になります。

死亡した日から2週間以内ではなく、新しい代表(経営)が互選や株主総会で選出されてから2週間以内になります。

これを怠ると過料等のペナルティが課される可能性があるので注意してください。

死亡した経営者名義になっているものは、すべて新しい人名義に変更する必要があります。例えば、社会保険関係の届出は5日以内であり、タイトなスケジュールになることを意識してください。

新社長名義の財産や負債の相続

死亡した経営者が有していた「社長名義」の財産や負債についてもsたらしい人に相続します。もちろん、死亡した経営者の「個人的な財産や負債」(非会社のもの)はご家族の誰かが相続します。

注意したいのが借入金の担保や保証人などです。

多くの場合、経営者の金融機関から借入です。経営者個人名義で連帯保証人になっています。これについては、会社の借入ですので、新しい経営者に相続されることになるはずです。また、会社名義の不動産ではなく、死亡した経営者個人名義の不動産なども担保に会社の借入をしている場合、その変更手続きや新しい登記が必要になります。

個人名義の不動産を会社が相続することはよほどのことがない限りありません(家族が相続します)。その場合、新しく担保を提供して借り換えするのか、ご遺族の了解のもと引き続き担保を提供してもらうかなど、解決すべき問題がいくつもあり、その見通しも早急に立てます。

家族経営ならばそのあたりはあまり問題にならないかもしれませんが、中小企業かつ非家族経営の場合、社長個人が連帯保証人になっているケースなどで一定のリスクヘッジが求められます。

借入を知らなかった新しい経営者が債務も引き継ぐとなるとなかなか大変で、弁護士等のもしかり協議してください。

取引先や金融機関などへの説明

会社の取引先や金融機関にも経営者が死亡し交代したことを伝えてください。弔電やお悔やみの挨拶などが来るかもしれません。

会社を引き継ぐうえで注意すべきこと

keieisha-shibou_2

会社を引き継ぐうえで注意すべきことがあります。ここをチェックしないといきなり負債で会社が倒産してしまうなど、危機が訪れてしまいます。

したがって、常日頃から

  • 会社の債権債務・財務状況の把握
  • 社長個人の資産や債務状況の確認
  • 社長の相続人や相続状況の確認

については、広く役員や上級幹部、家族などと情報共有するようご注意ください。亡くなって「ブラックボックス」が残されると大事になります。

大企業の場合、税務部、総務部などで会社の資産や負債、財産の相続関係などが把握されていますが、中小企業の場合、社長がすべて行っているケースも珍しくありません。

まさに「ブラックボックス」状態であり、財務諸表が間違っている可能性もあります。社長が死亡して会社を引き継いだが、債務超過で倒産しそうだった。しかし、社員も家族も知らなかった、ということが起きうるのです。

少しでもブラックボックスを透明化するため、生前に情報共有してください。ひょっとすると、社長が死亡した場合、会社を清算した方が良いかもしれません。

経営者が死亡した場合、速やかに経理書類をすべて顧問税理士に見せ、また登記事項などについては弁護士に相談してください。法的な手続き(名義変更など以外)が必要になるかもしれません。それを無視して経営者変更だけ行うと、いきなり経営危機に陥る可能性があります。

経営者、社長が死亡した場合、生命保険で会社が死亡保険金を受取れることがあります。この保険金で未払い報酬の支払い、取引先への債務支払い、従業員への未払賃金等の支払いの原資にできるかもしれません。家族とも相談して経営者の「遺産」も有効活用します。

会社の経営者が急逝した場合に混乱しないための対策とは?

会社の経済社が急逝した場合、残された社員や家族が途方に暮れることがないよう、生前、元気なうちからできることがあります。対策はいざという時のためですので、元気な今こそできることをしておいてください。

家族経営の場合、取締役などの居場所や連絡先を把握しておく

取締役が死亡した代表者1人の会社であれば、株主総会を開いて後継の選任に入れますが(株主が家族だけならすぐ決まります)、取締役が3名以上いて、かつ代表者の個人的な知り合いや昔のツテ、名前を借りただけの人などの場合、取締役会を開こうにも連絡がつかない、どこの誰だかわからないということがありえます。

後任が決まらないと、事業を継続できなくなってしまいます。大企業であれば、取締役会などを定期的に開催していて、そのようなことにはなりませんが、小規模事業者の場合、小規模故人間関係で決まっていて、そこに立ち入れないケースがあります。

いざという時に困らないよう、連絡先やそれぞれの取締役について挨拶くらいは家族や従業員がしておきましょう。

会社の存続について死亡後の見通しを示しておく

大企業であれば(サラリーマン社長であれば)、後任については社内の手続きによって機関決定されますが、中小企業や家族経営の会社、1人会社(ワンマン会社)などでは、後任の宛てがないということに陥りかねません。

したがって、代表者が元気なうちに、後任や会社をどうするのかはっきりさせておく必要があります。何も決めずに死亡してしまうと、「社員派」「家族派」などで泥沼の争いになってしまうかもしれません。

具体的には

  1. 社員の誰かに会社経営をゆだねる(社員承継)
  2. 家族の誰かに後任をしてもらう(家族承継、親族内承継)
  3. 第3社に会社を譲る(事業承継、M&A)
  4. 代表者1代で事業を畳む

このどれかになります。通常1か2になるはずですが、社内、あるいは家族に適任者がおらず不安な場合、生前にいざという時の事業承継の宛を見つけておくのも良いかもしれません。ただ、経営者が死亡するまでは自分で経営を続けたい場合、病気などである程度
準備」できるケースならM&Aができますが、元気だったのにある日突然というケースでは、それは難しいかもしれません。

社員や家族と自分の死亡後について、大まかな会社のあり方について、日ごろから意見共有しておくのが大切です。

遺言を書いておく

遺言によって代表者が持っていた株式の相続配分を決定しておきます。

「自分が死亡した場合後継者は〇〇に」という遺言について法的効果はありませんが、「自分の株式の8割は息子の〇〇に、残り2割は娘の〇〇に」という遺言は法的に有効です。

代表者が多くの株式を所有している場合、法定相続分を超えて誰かに株式を委譲することで、経営者を決められます。法定相続分だけだと、別の人に会社の経営を握られてしまうようなケースも考えられ、これは生前に準備できます。自筆でもいいですが、第3者への対抗を考えると、公正証書役場で「公正証書遺言」を作成しておくとよいでしょう。

もちろん、慕われている社長ならば「後継者は〇〇に」という「遺言」が見つかれば、周囲が後継者指名された人を社長に推挙するということは十分に考えられ、書いておいてもよいでしょう。

いつ何があるかわからないので事前に準備をしてください!

keieisha-shibou_3

特に持病がなく健康そのものだと思っていても、ある日事故で死亡する可能性もゼロではありません。

自分が死亡した後の家族や社員、社会への影響を考えると、スムーズに後継体制へ移行できるよう準備とチェックしておくことは必要です。

生涯現役を貫くのは素晴らしいことですが、何が起きるかわかりません。また、亡くならなくても、けがや病気で経営者としての任を果たせなくなることも考えられます。

残された人たちが途方に暮れないように、ぜひ事前の対策をお願いします。

これもある種のBCP(事業継続計画)です。みなさんだけはわからない場合、専門家にも相談しながら進めてください。いざという時の対策ができれば、精神的にも楽になり経営者としてもっと活躍できるはずです。

タイトルとURLをコピーしました