【まとめ】企業が巻き込まれる可能性のある退職した社員とのトラブル

【まとめ】企業が巻き込まれる可能性のある退職した社員とのトラブル 労務リスク

社員が会社を退職する際、「円満退社」ばかりとは限りません。退職することになった社員は、もはや失うもののない「無敵の人」です。これまで我慢してきたものについて、一気に憂さ晴らしとばかりにきつい態度に出て、企業側を巻き込み、迷惑をかけるかもしれません。

トラブルメーカーとして「立つ鳥跡を濁」しまくる社員に対して、企業側は何ができるのでしょうか?従業員として最後まで誠実に業務に取り組んでもらいたいのですが、そうではない人もいます。

従業員退職時に企業が巻き込まれそうなトラブルや注意点、トラブルを回避するために何ができるのか、そのポイントなどをここでは解説します。

企業目線で考える従業員の退職時トラブル

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退職については企業の立場、やめる社員、従業員の立場で意見の食い違いや対立が生じてしまいます。お互いに水掛け論になってしまうこともありますが、ここでは読者の方に合わせて、会社目線、人事目線でのトラブルケースについて考えていきましょう。

ここに挙げたもの以外にもトラブル要因はいくつもあります(代表的なものを挙げます)。

社員がいきなり辞めると言って来なくなった

従業員がいきなり出勤しなくなってしまいました。電話すると「辞めます」と一言だけ。あるいは完全に音信不通になってしまうケースもあります。

辞めるという意思表示があればそれを受けるしかありませんが、仕事への影響も甚大です。まったく音信不通の場合、事故や事件に巻き込まれた可能性や急病によって部屋で倒れているなど、会社として動かなければならない場面も想定されます。

従業員の実家へ問い合わせるなどしなければなりませんが、それが従業員、家族、会社の3者間トラブルの火種にもなりかねません。

退職代行を使ってそれっきり音信不通になった

本人が退職届や退職願を出せばまだいいのですが、最近はやりの「退職代行」を使って退職届を出したとき、そのまま受理してもよいのでしょうか?退職代行業は弁護士のように交渉ができません。

従業員は会社とのやり取りをしたくないので退職代行を使っています。しかし、退職代行は交渉する権限がなく、単に退職届を出すだけの業者です。

従業員と企業の認識に違いがある場合や、合わせて有給休暇の取得や未払い残業代の請求までしてきた場合、弁護士マターになります。しかし、従業員は交渉の意思がなく、会社ともうかかわりたくないのです。

これは企業側としても困った事態になります。

退職届、退職願の提出を拒否した

辞めたい人が退職届(退職願)を出さないのは変な話かと思われるかもしれませんが、退職届を出して辞めると「自己都合退職」になります。

そう、「会社都合退職」を狙って退職届を出さない従業員がいます。会社都合退職ならば、失業手当受給などで有利な場面があります。懲戒解雇ではなく、会社都合解雇にすることで、従業員はメリットを受けられます。

しかし、「ゴネ得」を許してしまってよいのでしょうか?ひょっとすると、会社都合退職にさせて、カウンターで「不当解雇」と訴えるつもりなのかもしれません。会社に怨恨があって辞める人は何をするかわかりません。

自己都合退職なのに会社都合退職にしてほしいと言ってきた

上と同じですが、退職届を出して、なおかつ会社都合退職を求めてくると、話し合いで大揉めになるかもしれません。

未払い残業代請求やセクハラ、パワハラなどについて弁護士から連絡があった

単に退職するだけではなく、これを機に黙っていた未払い残業代請求や、セクハラ、パワハラの事実を告げて損害賠償請求や労災認定を求めるケースがあります。

本当に未払い残業代やセクハラ、パワハラがあれば大事になります。弁護士対応が不可欠なケースになり、証拠によっては「やった」「やらない」のトラブルに発展する可能性もあります。

企業の悪口をSNSや口コミサイトに投稿した

辞めるので、これまで黙っていた企業への悪口や不祥事について、SNSや掲示板、口コミサイトなどで従業員が告発するかもしれません。名誉棄損になるケースもありますし、逆に内部告発的にコンプライアンスに重大な影響を与えることもあります。

放置できるものではないので、何らかの対応が必要となり、そこでトラブルが生じることは十分考えられます。

感情的な怒鳴りあい、暴力など

お互いの不信感から、従業員が暴言を吐いたり、場合によっては「お礼参り」的なことが起きたりしてしまう最悪のケースです。これはトラブルの最たるものであり、民事だけではなく刑事事案になる可能性もある重大なトラブルです。

企業側が退職を認めなかった

余人をもって代えがたい従業員の場合、退職の意思表示をしても企業側が認めないことがあります。これは職業選択の自由を奪う行為であり違法です。

これは企業側に帰責事由がありますが、トラブルのもとになります。辞められない、辞めさせくれないというのは、ブラック企業の特徴でもあり、みなさんの会社に心当たりはありませんか?

本当に引き留めたいくらいの人材であれば、待遇面などについて弁護士も交えて交渉しないといけません。

従業員の退職時のトラブルを防ぐためにできること、トラブル防止のポイントとは?

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企業の人事担当者や役員も辞めていく従業員も人間です。どうしてもそこには感情的な対立や行き違いが生じてしまいます。トラブル発生を少しでも減らしていくために企業側でできることは何なのでしょうか?

ポイントをまとめました。できることから実践していきましょう。

法律を守った対応、コンプライアンス順守

従業員が反抗的な態度に出ていても、企業側が同じレベルに落ちては無意味で情けない対応になります。

会社と従業員間トラブルを防ぐにはまず、企業側が法令順守とコンプライアンスに沿った行動が必要です。法的にも企業倫理的にもこちらが問題ないということになれば、辞めていく従業員への圧力になります。

従業員も完璧な対応をする企業側に無意味な反抗しても、情けない独り相撲だと思って、投げやりな行動を見直す可能性があります。

もちろん、相手に隙を与えないことで、訴訟を起こされるリスクも減らせます。特に労働基準法については、残業や有給休暇対応などで、労働問題に強い(従業員側の)弁護士に付け入る隙を与えてしまいます。

本気で従業員が弁護士を雇って企業を攻めると、かなり不利になってしまう部分があります。特に以下の項目について、問題がないか、法令、コンプライアンスともに順守されているか確認をお願いします。

  • 従業員の賃金未払い
  • 残業代支払いが適切か
  • 辞める意思表示をした従業員へ過度な引き止め、慰留の範疇を超えた強要(辞めさせない)
  • 業務上必要な指導を超えたパワハラ
  • セクハラ的な問題がなかったか
  • 勤務態度が良くない従業員に対しいきなり退職を求めていないか
  • 解雇の根拠がない
  • 「追い出し部屋」など常識を超えた退職への追い込み

これらに対して企業側に落ち度があると、従業員(&弁護士)と法廷闘争にもなってしまいます。

いくら従業員に問題あり、辞めさせたくても、いきなりの退職勧告ではなく、充分な指導や配置転換が必要です。できることをしても改善できないので辞めてもらうという立てつけにします。

明らかな違法行為でない場合、つまり、違法かどうかの線引きが難しいものあります。それをなるべくグレーにしないためにも法令順守、コンプライアンスに沿った行動が大切です。

退職時のルールを明文化する

退職時、従業員がどのように行動するべきか、就業規則などでルールが明文化されていないと、会社側も従業員側も困り、トラブルにつながってしまいます。

法的には辞める2週間前に退職の意思表示をすればいいのですが、就業規則で1か月前と定めることで、辞める間際のトラブルリスクを減らせます。

就業規則で1か月前の退職届と定めても、法律が2週間前なので、2週間前に退職届を従業員が出しても拒めませんが、いやがらせ的な急な退職以外の退職について、従業員は就業規則に従ってくれるはずです。

退職ルールを明文化することで、言った言わない、出した出さない、こうした初歩的なトラブルを回避できます。

属人的ではない退職対応になるので、担当者による退職時の対応に差が付きません。公平に、効果的に退職手続きが進みトラブルも減ります。

口約束ではなく、必ず書面で退職の意思確認を行う

契約は口頭でも成立しますが、証拠に残すため書面を求めてください。つまり、退職届(あるいは退職願)の提出を求めてください。

たとえ、突然出社しなくなり、電話で「辞めたい」と言ってきた従業員がいてもそのままにしないでください。

退職届フォーマット(署名捺印すればよいもの)や返信用封筒などを添えて、とにかく書面をもらってください。

退職後、「会社都合での退職にさせられた」「不当解雇だった」などと逆切れ訴訟を起こされる可能性もあります。そうしたことを防ぐ意味でも、証拠になるものをもらっておきましょう。

退職に関するやりとりのメールや通話記録などもあるとさらに心強いです。

威圧的な対応をせず紳士的に接する

辞める従業員がけんか腰でも、こちらはあくまで紳士的に対応します。感情的にになりそうでも我慢します。

威圧的な態度をとってしまうと、退職について話がこじれてしまうだけでなく、パワハラで訴えられる可能性もあります。

従業員は常にICレコーダーを忍ばせている前提で企業側は行動し、接します。

もしトラブルを防げなかったら?

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トラブルを未然に防ぐためにこれらのことを実践しても、100%のリスク回避はできません。

従業員がいきなり訴状を出してくる可能性もあります。

もし、従業員の退職について何らかのトラブルが起きた場合には、以下の点に注視して、速やかに人事や経営者を含めて相談して、対応を決めてください。

<トラブルが起きてしまったらどうする?>

  1. 直接対応している社員だけで解決しない、上司などへ情報共有する
  2. 人事や労務の専門部署と相談する
  3. 顧問弁護士に相談、指示を仰ぐ

トラブル先の従業員の後ろには、弁護士がいる前提で行動します。安易に担当者だけで体操してしまうと、さらに墓穴を掘り、従業員(+弁護士)に付け込まれてしまいます。

トラブルを起こしている従業員の目的が、金銭なのか、会社を貶めることなのか、思い切り暴れて憂さ晴らししたいのかでも対応が変わります。やはり、こうした人事労務について詳しい弁護士や法律事務所とコネクションを作っておくことが大切です。

まとめ

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退職時にトラブルになると企業側も従業員も双方、わだかまりが残り、非常にいやな気持で雇用関係解消になります。

そうなってしまったのは従業員が100%悪いのか、そうではなく企業側にも帰責事由があるのかどちらでしょうか?

従業員は辞めるわけで、今の会社の地位やキャリアはどうでもよく、攻撃的になっているかもしれません。「無敵の人」になってしまった従業員を相手にしなければならないのはなかなか大変です。

情報やトラブルの芽については、担当者レベルで抱え込むと延焼します。必ず部署内や経営陣、顧問弁護士等と情報共有してください。恥ずかしいことではなく、隠ぺいした方がもっと大事になります。

企業側に問題がなければ法的措置をちらつかせられても勝てます。そうならいように、しっかり就業規則等の準備や退職のルール作りをお願いします。

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