労務担当者が抑えておくべき労務リスクの種類と回避方法

労務担当者が抑えておくべき労務リスクの種類と回避方法 労務リスク

企業には、いろいろな部署があり役割を担っています。
それぞれの部署の担当者は内情を考慮しながらリスク管理や業務の効率化を考えていきます。
企業にはいろいろな部署の担当者がいますが、その中に労務担当者と言われるものもあります。

労務担当者は労務に関するリスクとその回避・対策方法を知っておくことが大事ですが「具体的にどのように行えばいいのか?」と悩む人もいるでしょう。
そこで今回は労務担当者が抑えておくべきリスクの種類と回避方法を紹介しましょう。

労務リスクとは何か?

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会社経営をする際は労務リスクについても確認しておくことが大事です。
労務リスクとは、労働問題によって発生するリスクのことです。
労働問題は雇用関係をめぐるトラブルを指しており、金銭や労働条件に関して企業と社員の間に起こる問題です。

企業は事業や経営のために労働者を雇用しますが、そのためには環境を整える必要があります。
例えば、給与や昇給制度、福利厚生、仕事のサポート体制などです。仕事に対する給料を従業員に与えているだけでは十分ではなく、もし企業のやり方が悪いなら問題が悪化して損害賠償を請求されること、また、企業の評判が悪くなる可能性もあります。

特に、最近では働き方改革などで従業員に対して大きな問題を発生しているようなら、企業が責任追求されることが増えているため、労務リスクを改善して職場の環境を整えてあげることが重要です。
もし,問題が発生しそうであれば早めに対策を行って改善するようにしましょう。

労務リスクにはどのような種類があるのか?

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労務リスクはについて企業はしっかり考えておくことが大事です。
ただ「どのような種類があるのか?」と疑問を感じることもあるでしょう。
労務リスクには以下のようなリスクがあるため、内容を紹介しましょう。

従業員に長時間労働させる

労務リスク1つ目は従業員に長時間労働させることです。
企業は事業の発展や売上による収益を確保するため、従業員に労働してもらう必要があります。
ただ、労働時間は原則として1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないことを法定労働時間が定めています。

時間外労働する場合は月に45時間、年360時間と規定されており,両方を同時に守っておくことが大事です。
企業の事業によっては1日8時間を超える場合は残業を依頼することができますが、月に45時間を超えないように管理することが大事です。

もし、労働外時間で長時間働かせた場合は「6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」が科されることになります。
そのため、経営側は従業員に対して長時間労働とならないように労働時間をしっかり確保することが大事です。
従業員の少ない企業だと仕事量が追い付かず、1人の労働時間が長くなるケースも多いため、十分注意しておきましょう。

上司などからのハラスメント

2つ目の労務リスクはハラスメントです。
職場ではいろいろな人が働いており、性格や価値基準も違います。
そのため、職場でハラスメントが発生することも考え必要があり、1つではなく複数の事態を考えておく必要があります。
例えば、性的な言動で相手や職場に精神的なダメージや被害を与えるセクシュアルハラスメント、優越的な関係を背景に相手に害を及ぼす言動を行うパワーハラスメントなどです。

セクシュアルハラスメントは、悪気なく行っていることも多く、近年では問題となっています。
パワーハラスメントは、上司が部下に必要以上の業務を与えて精神的に追い込ませることがあるため、企業としては従業員の環境管理として対策を行う必要があるでしょう。

もし、ハラスメントが横行している職場であれば、被害を受けた従業員は職場で能力を発揮できないため、業務効率の低下につながり離職率も高くなって必要な労働力を確保できなくなることもあります。
さらに、ハラスメントに対策をしなかったことで民事訴訟に発展してしまい、企業のイメージダウンや金銭的な損失を被ることも考えられます。

ハラスメントが起きないように企業はしっかり職場の秩序を守るようにする必要があるでしょう。
また、ハラスメントも時代の流れによって新しいものが生まれることもあります。
そのため,職場でどのようなハラスメントに注意すべきなのか情報もしっかり得るようにしましょう。

残業代の不払い

3つ目の労務リスクは残業代の不払いです。
従業員は時間外労働をするときは残業代を給与に加算してもらうことができます。
企業側も残業時間に応じて給与を支払うことは義務なので、しっかり計算して支払うことが大事です。

ただ、企業によっては従業員の残業代を支払わないこともあります。
残業時間が給与に加算されていないことが発覚した場合、企業は労働基準監督署から是正勧告を受け、遅延利息や付加金の支払いを求められることになります。
さらに、残業代の未払いが発覚すれば、訴訟されることもあり、周りの人に問題が発覚することになるため、大きなイメージダウンにつながります。

2020年には民法の改正によって、残業代請求権の消滅時効が2年から3年に延長されるようになりました。
残業代の未払いを行うと、企業側も大きな痛手を被ることになるため、労働時間と共に相応の支払いを行うことができるように管理してください。

労働災害への対策

4つ目の労務リスクは労働災害です。労働災害に含まれるものは仕事中や通勤途中に起きた怪我、病気などであり、企業はこの点も注意しておくことが大事です。
もし,労働によって従業員が大怪我をしてしまったなら、状態によっては長期間職場に復帰することが難しくなります。

さらに、従業員は労災手当を付帯しているため、企業側が治療費を支払うなど、大きな出費になることもあるでしょう。
また、従業員が頻繁に怪我をしていることが分かると、企業としても大きなイメージダウンとなり、今後の事業拡大や人材確保に大きな影響を与えるでしょう。

そのため、企業は労働に災害に関して災害防止のための措置を行うことが大事です。災害防止の措置は

  • 危険防止の措置
  • 健康管理の措置
  • 安全衛生管理体制の整備
  • 安全管理衛生教育の実施

です。

危険なものを察知して事前に措置を講じておくなら、従業員が大怪我や病気になることを防ぐことができ、企業の利益を守ることになります。
ただ、万が一労働災害が起こったなら経営側は労働基準監督署に対して申請手続きを行うようにしましょう。

不当な従業員への解雇

5つ目の労務リスクは不当な解雇です。
経営側は従業員を解雇する際は正当な理由がなくてはなりません。
例えば、従業員が何か不祥事を起こして、会社の秩序を乱したり社会に損失を被らせたりした場合は懲戒解雇することができます。
また、会社の経営が悪化したり、経営のトップが変更したりした場合は整理解雇として従業員を解雇することも可能です。

ただ、整理解雇の場合は会社の都合によって解雇するため、経営上の必要性や解雇者の対象基準が公平であること、手続きに正当性があるのかなど、しっかり要件を満たしておくことが大事です。
もし、解雇の基準が不当で合理性がなく、社会の常識にも当てはまらない場合は不当な対応とされてしまい、会社自体のイメージが悪化してしまうこともあります。

特に、今は解雇に関して労働契約法で厳しく制限されているため、正当性を重視して解雇する必要性があります。
そのため、従業員を解雇する必要があるなら条件が当てはまっているのか確認して、正当なものであることを証明できるようにしましょう。

情報漏えい

6つ目の労務リスクは情報漏えいです。企業は商品やサービスを購入している顧客の情報の保護、また従業員の個人データをしっかり保護する必要性があります。
もし、企業が持っている個人データが流出するということになれば、企業は大きなイメージダウンとなり、さらに情報漏えいの原因を追求して、改善する必要もあるので、多大な時間と労力がかかります。

情報漏えいの改善のために顧客から対応を求められるため、通常業務のリソースが足りなくなる事態も考えられるでしょう。
情報漏えいしたことで大きな損害賠償が発生することになれば、企業自体が資金難に陥ってしまい、運営が厳しくなることも十分考えられます。

今では企業も個人情報を保護するために、セキュリティの強化を行っていますが、しっかり対策を練って情報が外部に漏れないように注意する必要があるでしょう。
また、個人情報保護法をも守ることも義務付けられているため、しっかり確認しておきましょう。

労務リスクへの対策とは?

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労務リスクはしっかり対策を考えておかなければ、企業のダメージが大きくなってしまいます。
事態が悪化すれば、企業の運営が困難になり、破綻に追い込まれることもあるため注意が必要です。
どのように対策を行えるのか紹介しましょう。

就業規則を明確に定める

労務リスクを抑えるためには、就業規則を明確に定めることが大事です。
これは、労働条件や従業員が守るべき規則を記したものであり、作成することで労務リスクを回避することが可能です。
例えば、就業規則で8時~17時までの定時時間で残業は最大2時間までと記載しているなら、従業員は労働時間を確認できるので安心できます。

また、解雇に関しても就業規則に記載しておくなら、正当な解雇となるので、従業員から反発されることもないでしょう。
ただ、就業規則は不合理なものでなく、正当性があるように記載しなくてはいけません。
そのため、就業規則を記載した際に法律を遵守したものであるか確認して従業員に知らせるようにしましょう。

雇用慣行賠償責任保険を利用する

企業は雇用慣行賠償責任保険を利用することもできます。
これは、ハラスメントや不当解雇の際に従業員から訴訟された際に、代わりに対応してもらうことができます。
パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントが起きた際に従業員から訴訟されたなら、企業自体も対応に追われるため業務に支障が出ることもあるでしょう。

また、訴訟の結果によっては大きな賠償金が出ることもあります。
そのときに雇用慣行賠償責任保険に加入していれば、その金額を補償してもらえるため、企業としてもダメージを抑えることが可能です。
企業の労務リスクとして、この保険制度の活用も考えておきましょう。

相談窓口を設置する

労務上のトラブルを未然に防ぐために、相談窓口を設置しておくこともおすすめです。
従業員がハラスメントを受けているとや残業が多くなっていることなど、労務上の問題は経営側が気付かないこともあります。

そのため、相談窓口を設置して従業員が問題やトラブルを話す場所を設けておくなら、トラブルを未然に防ぎやすくなるでしょう。
そして、相談窓口はできれば弁護士などの専門家を配置しておくのがおすすめです。
上司などであればハラスメントの加害者になっていることもあるため、従業員は相談しにくいからです。このように対策を考えておきましょう。

労務リスクに備えておこう

企業は労務リスクをしっかり考えて対策を練っておくことが大事です。
労務リスクを未然に防ぐことで企業のイメージと資金、また労働力を確保することができるからです。
運営を円滑に行うためには重要なことなので、ぜひ考えておきましょう。

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