デジタル化における最大のメリットと企業が陥りやすい落とし穴

デジタル化における最大のメリットと企業が陥りやすい落とし穴 デジタルリスク

デジタル庁も発足し、脱印鑑など企業のIT化、デジタル化は待ったなしの状況だと広く共有されています。
しかし、何事にもメリットとデメリットはつきものであり、急速なIT化、デジタル化については、企業は留意する点もあります。

IT化、デジタル化が企業にもたらすメリットとデメリットを整理し、どのように環境整備するのか経営者の手腕が問われます。

今回は企業がIT化、デジタル化をするにあたってのメリットとデメリット、ポイントを解説いたします。

IT化とデジタル化

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IT化もデジタル化も同じような内容ととらえられていますが、実際にはIT化とデジタル化(DX化ともいう)は異なる概念です。ここで、IT化とデジタル化の概念について押さえておきましょう。

IT化とは

IT化は“Information Technology”によってアナログな作業を効率化し、業務効率化やコスト削減を目指すことを言います。

つまり、これまで会計の仕訳、簿記を手作業でやっていたものを、会計ソフトを使うことによって時間や手間を効率化することができます。
手作業の簿記ならば1日かかっていた作業も、会計ソフトやそれに付随する領収証スキャン機能、自動仕訳などによって2時間かからずできてしまう、そうすると人件費や残業代も節約でき、その分コストを減らすことができます。

IT化によって可能になることは以下の内容です。

業務の自動化

これまで手作業で行っていた工程が、IT化によって自動化されます。
先ほどの簿記の例でも、会計ソフトは勝手に銀行口座と同期し、こちらで入力しなくても、印字項目から費目を推測します。

「トウキヨウデンリヨク ¥10,000」

と記帳があれば、

「水道光熱費 電気代 東京電力 〇〇円」と推測し

借方貸方摘要
水道光熱費¥10,000○○銀行¥10,000〇月電気代 東京電力

と自動的に仕訳帳の作成や、総勘定元帳のデータも作成します。

結果的に時間や手間のかかる業務がなくなり大幅なコスト削減につながります。

情報のデジタル化

IT化によって、情報がデジタル化できます。紙ベースで行っていたものや資料は、データ化され、パソコンのハードディスクやオンライン上のストレージに保存されます。

紙ベースのデータは火事や水害、盗難などのリスクがありますが、データ化されればバックアップも容易です。
オンラインストレージに保存すれば、事実上永遠にデータが記録され、紛失のリスクもありません。

もちろん、紙に印字することもできますし、スマホやパソコンがあれば、世界中どこでもそのデータだけを抽出することができます。

文書の管理場所が必要なくなり、タグ付けによって分類や抽出が容易になります。

デジタル化とは?

一方、デジタル化(DX化)は、IT技術やデジタル技術を活用し、今までにない価値を社会に提供することを指します。

つまり、これまで行っていた仕事のやり方、目的などがデジタル化によって変わります。
ウーバーイーツなどのオンライン決済やスマホの位置情報をもとにしたビジネスは、デジタル化が進展しなければ不可能でした。

「脱ハンコ」もこれまで行っていた稟議決裁のあり方を変えるものになるかもしれません。

デジタル化によって

1.デジタイゼーション(デジタル化)

既存の業務の流れの効率化やコストカット

2.デジタライゼーション

新たな価値のデジタル化による創造

3.デジタルトランスフォーメーション(DX)

デジタル化によって、ビジネスモデルや人々の生活が変わる

上記の3点が達成されます。

上述のウーバーイーツだけではなく、Amazonなどオンライン通販、働き方改革としてのテレワーク、ワーケーションなどもデジタル化の恩恵になります。

娯楽についても、ゲームの通信対戦だけではなく、オンラインMMOやVRなど、自分自身をデジタルな存在に置き換えて、世界中のプレイヤーと遊ぶことや、仮想空間にアバターとして自分を置き換え冒険するなど、遊びのあり方や価値観も大きく変わりつつあります。

IT化とデジタル化の違い

IT化もデジタル化も、IT技術や通信技術の発達によりもたらされるものですが、両者には違いがあります。

IT化が仕事における「局所的な業務効率化とコスト削減」を目的としているのに対して、デジタル化は「業務そのものを俯瞰し、そのある方や価値観を大局的に変革する」ことを目的としています。

つまり、IT化がありその先にデジタル化がある、ということです。

デジタル化が生み出したビジネスとして、ウーバーイーツを挙げましたが、ウーバーイーツは「スマホ」「位置情報の取得」「オンライン決済」という3つのIT化がなければできなかったことです。

電話をして出前を取る場合、運ぶのは店員やアルバイトですが、個人事業主の配達員を注文ごとにピックアップし、報酬を複雑な公式で算出することはIT技術をもとにしたデジタル化以前にはできなかったことです。

IT化を前提にしたデジタル化があって、初めて新しい価値観に基づくビジネスが始まります。

IT化、デジタル化のメリットとデメリット

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IT化、デジタル化それぞれ行うことでどのようなメリットとデメリットがあるのかをまとめました。

IT化のメリットとデメリット

まずIT化を進めるメリットとデメリットについて知っておきましょう。

IT化のメリット

IT化のメリットは以下になります。

生産性向上や利益増加につながる

最初の簿記の例で述べたように、IT化を進めることで、業務を効率化し、生産性が向上します。
また、同じ仕事を完了させる時間が減るので、人件費の削減や費用対効果向上が期待できます。

結果として、IT導入費用よりもコスト削減効果が上回り、企業の利益幅が大きくなります。

「生産性」と「利益」が向上します。

情報管理がしやすくなり、共有できるようになる

手書きベースで簿記をしていれば、会計担当者しか今どうなっているかわかりませんが、IY化により会計ソフトを導入することで、誰でも(権限者ですが)、会計ソフトにアクセスできるようになり現状がわかります。

仕事の属人的要素が減り、「この人しかわからない」ということがなくなります。

パソコン上からデータを取り出せるので、ファイルや紙の資料を探す手間も削減できます。

セキュリティさえしっかりできれば。出社しなくても自宅のパソコンからデータにアクセスでき、テレワークや働き方改革につなげることもできます。

デジタル化の準備になる

デジタル化の推進はIT化が条件になるので、IT化を進めることで、デジタル化=業務改革、ビジネスの変革のための準備になります。まずITによって仕事のコスパがよくなることを確認できます。

IT化のデメリット

一方デメリットもあります。

IT化にお金がかかる

会計ソフトを導入するにもお金がかかります。
それ以外のシステムやITソフト導入にも結構な支出が必要で、それならそのままでいいや、と思うことになる可能性があります。

ただし、IT化(やデジタル化)については、国や自治体の補助金や助成金を活用することもでき、積極的に補助を受けることも可能です。

情報漏洩リスク

自宅のパソコンから情報にアクセスできるということは、情報漏洩のリスクがあります。
誰でも、どこからでもアクセスできるということは、悪意を持った第三者に対抗できます。

紙ベースのアナログ処理であれば、企業の金庫に保管しておけば情報漏洩リスクはないからです。

全員IT化に対応できないかもしれない

高齢者、シニア層はIT化に対応できないかもしれません。
いまだに携帯電話を持たない人や、スマホは嫌でガラケーを使っているような層には、IT化に必要なシステムやソフトの習得が難しい可能性があります。

デジタル化のメリットとデメリット

続いてデジタル化のメリット、デメリットです。

デジタル化のメリット

デジタル化のメリットはIT化以上に大きなものになります。

企業のビジネスモデルや業界のあり方が変わる

ウーバーイーツやAmazonの例を見てもわかるように、これまでのビジネスや社会、生活のあり方が変わります。
壮大なゲームチェンジャーとして仕掛けることができるかもしれません。

人手不足の解消、戦略部門への人員配置が可能になる

さまざまな業務が効率化し、自動でできるようになるので、企業の頭脳である、デジタルではできない戦略部門に人を集中させることができます。

オフィスがいらなくなる

デジタル化が進むと、職場、オフィスの概念が変わります。完全リモートワーク、テレワークで仕事ができるようになり、都心部にお金をかけてオフィスを借りなくても済むようになります。

こうした仕事のあり方が正しいかどうかは意見がわかりますが、今までの「電車に乗って通勤」という概念が変わります。

デジタル化のデメリット

デジタル化によるデメリットも押さえておきましょう。

設備投資がかかる

IT化を実現した上でデジタル化の整備をするので、その設備投資コストは非常に大きなものになります。従業員数名の企業ならば、IT化用のソフト導入などだけで、あとは社内での会話で十分かもしれません。

対人コミュニケーションが希薄になる恐れ

リモートワーク、テレワークは100%正しくないのは、GoogleやAmazonといった

GAFAMが出社しての対面ワークに戻していることからも、ある程度アナログな部分も仕事には必要なことを示しています。

とはいえ日本の場合、そうした理由をつけると結局何も変わらないので、まずデジタル化を進めることが大切かもしれません。

情報漏洩やシステム障害などが企業活動を致命的にしかねない

日本におけるデジタル化の旗振り役やる「デジタル庁」でこのようなニュースがありました。

【「デジ庁「BCC」と「TO」間違え アドレス記入ミスでまた情報流出」(朝日新聞)】
https://digital.asahi.com/articles/ASQ415QV5Q41ULFA02J.html

唖然とする出来事ですが、人が関与する以上起きうるのです。
そのリスクを下げるためのデジタル化ですが、進めるのであればミスが無いよう細心の注意を払わなければなりません。

システム統合しても全然トラブルが絶えない某銀行のようになると、デジタル化は何もしないよりもダメージを深めてしまいます。

デジタル化による情報漏洩やシステム障害などが企業活動を致命的にしかねないことをデメリットとして意識してください。

IT化、デジタル化は補助金等も活用し上手に進めよう

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以上、IT化、デジタル化のメリットとデメリットについて解説しました。
どちらも、設備投資やソフト、システムの導入資金が必要であり、なかなか踏み込めないと思われるかもしれません。

しかし、行政としてもIT化やデジタル化を進めたいと考えていて、それを後押しするための「IT導入補助金」などの各種補助金、助成金制度を拡充しています。

補助金が通れば、IT化、デジタル化の費用の何割か(場合によっては全額)が支給され、資金的なリスクを軽減することができます。
専門家に相談することが不可欠な補助金もあり、その過程で、何をIT化、デジタル化できるかブラッシュアップできるはずです。

ともかく、企業の現状を客観的に見ていただき、IT化、デジタル化を進められる部分は、そのメリットを享受できるよう取り組んでいただければと存じます。

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