事業を行っていく上では資金が必要になります。その際に重要になるのがどのように必要な資金を調達するかです。資金調達と言ってもさまざまな方法があります。
資金が必要になった場合、みなさんはどのように資金調達をしますか?
資金調達の方法は融資、借入だけではありません。ここでは様々な資金調達の種類、方法について解説していきます。
それぞれ仕組み、システムが異なるので、ご自身の経営状況、資金が必要な理由に合った資金調達方法を考えてみましょう。
資金調達の目的
そもそもなぜ資金調達をするのでしょうか?資金調達する目的について簡単にまとめてみました。
運転資金の確保
会社を回していくためには、普段の経費である運転資金の確保が不可欠です。
売上の中から運転資金を調達できれば良いのですが、掛け売りなどですぐに入って来ないこともあります。
そのため、資金調達が必要になります。
家賃、水道光熱費、従業員の給与、商品の仕入れ、買掛金支払いなど事業を継続していくうえで不可欠な資金、会社の血液とも呼べるものです。
設備資金の確保
事業を拡張していくためには、新規に高性能な機械の購入や新施設建設、車両購入など設備投資も重要になります。
あるいは、自社の商品を製造している機械が突発的に故障し、緊急に修理する必要が出るかもしれません。
そうした場合、設備資金を調達しないと事業の継続ができなくなってしまいます。
会社の開業費用
会社設立や開業資金について全額自己資金(自分の預貯金)で賄うというのはなかなか大変です。
そのため、店舗や事務所の取得費、設備費用(パソコン、電話、電気機器、看板など)、備品(オフィス用品など)について、資金調達を行い捻出するケースがあります。
事業実績がない中では、決算書などの実績を見ながら融資を受けることが難しくなります。
そのため、創業融資などの特例的な融資やそれ以外の資金調達方法を模索することになります。
事業の拡大のための攻めの投資
新店舗や新工場のオープン資金、新規事業立ち上げ、これまでにない顧客層へのPRなど、既存の事業を拡張し会社を大きくしていく際にも資金調達が必要です。
社員を増やす場合、採用コストや人件費がかかります。
新規に機械などの購入する場合、そのための資金が必要です。
人や機械を増やすお金は会っても、それが軌道に乗って採算ベースがプラスになるまでは、その間のつなぎ資金も必要になります。
そのため、当面は事業拡張を支えるための資金調達が不可欠になります。
会社の信頼を高める
最後、これは少々意外に思われるかもしれません。
会社の信用を高めるためには、むしろ資金調達を行わず、既存のキャッシュフローで回した方が良いと思われるからです。
これは例えば、金融機関からお金を借りて、「返済実績」を作ることで、その金融機関からの信用を高め、将来的に事業拡大や高額の設備資金が必要になった時に、資金調達(融資)しやすくなるのです。
会社の信用を高めるための資金調達は少額でかまいません。
その機関から資金調達をしたという事実が大切です。
ただし、消費者金融などからの資金調達は却って信用を落とします。
信用情報照会でわかる資金調達については、その相手も含めて精査することが大切です。
企業の資金調達の種類は3つに分けられる
資金調達というと、借入や株式の発行などが思い浮かびますが、実はそれだけではありません。
様々な方法については後程言及しますが、資金調達方法は大きく3つの種類に分けられます。
●アセット・ファイナンス:資産の信用力をもとに資金を調達する。代表例「ファクタリング」 ●デット・ファイナンス:お金を借りて資金を調達する。代表例「銀行からの融資」 ●エクイティ・ファイナンス:資本、総資産の増加を伴う方法で資金を調達する。代表例「新株の発行」 |
これらのメリット、デメリット、およびそれぞれがどのような人に向いているのか、比較表にしてみました。
メリット | デメリット | おすすめユーザー | |
アセット・ファイナンス | ・資産を無駄にしない ・オフバランス化 ・債務者のリスクヘッジ | ・そもそも活用できる資産がなければ利用できない | ・多様な資産を持っている人 ・休眠資産を有効活用したい人 ・心配な取引先がある人 |
デット・ファイナンス | ・誰でも利用できる ・会社の経営に口出しされない ・金融機関と関係が深まる | ・返済ができなくなるリスク ・信用情報に傷がつくリスク ・負債が増える | ・経営が安定し事業計画が立つ人 ・他人に頼らず自分で堅実経営をしたい人 |
エクイティ・ファイナンス | ・返済義務がない ・資金使途が比較的自由 | ・株式を多数取得され、会社を乗っ取られるリスク | ・起業する人 ・新規事業をスタートアップする人 ・ベンチャー企業 |
アセット・ファイナンスによる資金調達方法
アセット・ファイナンスは、企業が保有する資産から生み出される資金を原資とする資金調達方法です。
「資産を売る」「資産をお金に変える」方法だとイメージしてください。
代表的な例として不動産の売却、知的財産権の売却の売却などが挙げられます。
ファクタリングも持っている売掛債権という資産の売却なのでここに該当します。
その他、金融資産、知的財産権(特許や著作権)などキャッシュフローを生む資産であれば、それによる資金調達はすべてアセット・ファイナンスになります
<アセット・ファイナンスの具体例> ①不動産売却 ②知的財産権(特許、商標、著作権等)売却 ③独占販売権、営業権などの無形資産の売却 ④ファクタリング ⑤でんさい(電子記録債権)譲渡 ⑥債権回収 ⑦セール&リースバック(※) |
(※)「セール&リースバック」とは。 事業用の(使用する)不動産、製造設備、機械、事務機器、車両などの資産をリース会社へいったん売却し現金化します。 その資産をリース契約で利用します。 リース料がかかるのですが、これは経費にでき、資産を現金化することで緊急時の資金需要に対応できます。 質に入れて現金を受け取り、その質種をリースで使い続けるイメージです。 |
デッド・ファイナンスによる資金調達方法
デット・ファイナンスは、「借入金融」とも呼ばれるもので、「お金を借りて」行う資金調達とイメージしてください。
銀行や消費者金融からの借入だけではなく、社債発行、私募債発行などによる資金調達もここに該当します。
株式は返済義務がないのでここには該当しません。
<デット・ファイナンスの具体例> ⑧銀行融資(無担保、無保証人) ⑨自治体等の公的融資(無担保、無保証人) ⑩不動産担保融資 ⑪消費者金融、ビジネスローン ⑫手形割引 ⑬社債、私募債発行 ⑭ABL(動産・売掛金担保融資)(※) |
(※) 動産(在庫や機械、車両等)や売掛債権を担保に銀行から融資を受ける資金調達手法です。 不動産担保融資に代わるものとして金融庁も推奨しています。 売却するまで現金化できない在庫や使わない機械、支払期日到来前の売掛債権を担保に資金調達するもので、近年注目されています。 |
エクイティ・ファイナンスによる資金調達方法
資本(総資産)の増加を伴う資金調達方法です。他者から「出資を受ける」形での資金調達になります。
株式の発行、株主割り当て、第三者割当といった払込を伴う増資やクラウドファンディングもこちらに該当します。
負債が増えないですし、返済義務もないのですが、特に株でイメージされるように、「金を出したのだから口も出す」で経営を左右されることもあります。
最悪の場合、乗っ取られるリスクもあります。
<エクイティ・ファイナンスの具体例> ⑮新株発行公募 ⑯IPO(新規公開株)による資金調達 ⑰株主配当増資 ⑱第三者配当増資 ⑲クラウドファンディング ⑳ベンチャーキャピタルからの出資 |
資金調達の目的と各ファイナンスの相性
3種類の資金調達の種類があることをご理解いただけたでしょうか。
これと冒頭に開設した資金調達目的を組み合わせてみましょう。
運転資金調達と相性がいい資金調達方法と、設備資金や事業拡張に適した資金調達方法は異なることがあります。
以下資金調達方法目的ごとに相性が良い資金調達方法を表にまとめました。
ファクタリングで資金調達するのと、上で挙げた代表的な資金調達方法では何が違うのでしょうか?
いくつかの資金調達方法についてまとめてみました。
資金調達目的 | 相性の良い資金調達方法 |
運転資金 | 政府系金融機関からの融資 アセット・ファイナンス全般(特に緊急性がある場合ファクタリング) |
設備資金 | 政府系金融機関からの融資 ABL(動産・売掛金担保融資) 補助金や助成金(後述) |
開業費用 | 政府系金融機関(日本政策金融公庫)の創業融資 自治体の創業融資 個人投資家からの出資 クラウドファンディング |
事業拡張 | 民間金融機関からの融資 ベンチャーキャピタルからの出資 |
会社の信頼度向上 | 民間金融からの少額融資 そのほか関係を深めたい機関からの少額の資金調達 |
運転資金を資金調達したい場合、いつまでに資金が必要かで対応が変わります。
売掛金回収が間に合わない、大型案件を受注するために外注費や仕入れをしなければならない場合、入金を待てません。
そうした場合、ファクタリングをはじめとしたアセット・ファイナンスにより資金調達を図ることになります。
設備資金のように金額が多く、ある程度予定を立てられるものについては、デット・ファイナンスを中心に、なるべくリスクが低い方法での資金調達を計画します。
後述の補助金や助成金も計画性がある資金調達であれば、申し込みしてもよいでしょう。
事業拡張の場合、自社の事業に自信があるなら、エクイティ・ファイナンスによって借入によらないキャッシュフロー増を考えます。
総資産(資本)が増えれば、事業資金の「遊び」も大きくなり、より臨機応変に攻めの経営ができます。
開業費用ならば、しっかり事業計画したうえで、クラウドファンディングによる資金調達も可能です。クラウドファンディングならば株式発行による資金調達と違い、経営に介入されるリスクも減ります。
資金調達方法にはさまざまなものがあるとご理解いただけるはずです。
上記によらない資金調達方法「補助金」「助成金」
先ほどご紹介した「〇〇ファイナンス」という資金調達方法に含まれませんが、重要な資金調達方法として補助金や助成金があります。
補助金、助成金は行政機関(中央省庁)や都道府県、市町村などから受け取れる原則返済不要の資金です。
目的に合致した資金使途が必要で、また審査などで落とされる可能性もあります。
申し込みの条件は各補助金、助成金で異なり、その条件を満たしていなければ申し込めませんが、返済不要の資金を調達できるメリットは非常に大きいです。
ただし、補助金や助成金は原則後払いになります。事業実施の際には自己資金ないし、他の資金調達方法によって代金を支払い、後日行政機関から振り込みとなります。
事後審査や事業実施中のチェックもあり、ここで不支給になる可能性も否定できません。
補助金や助成金の専門家などとも相談しながら、審査通過、事業報告も含めて確実に対応できるようにしておいてください。
資金調達方法は多種多様!自社の目的、ニーズに適した方法で確実に経営改善を図ろう
資金調達方法は融資だけではありません。
それぞれどのような資金調達目的かによって、メリットとデメリットを判断し、適切な資金調達方法を考えます。
アセット・ファイナンス、デット・ファイナンス、エクイティ・ファイナンス、それぞれの違いを理解していただき、適切なタイミングで資金調達に動きましょう。
融資一辺倒ではなく、さまざまな資金調達方法があり、適切に選択することで経営にとって単なる資金調達以上の効果が期待できます。
多様な資金調達の種類、方法については資金調達に詳しい税理士やコンサルタントなどに聞いてみるとよいでしょう。
経営改善のため、資金調達の種類を知っていただき、役立ててください!